腰椎術後の筋断面積の経過について

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タイトル別名
  • ~術侵襲とコルセットの影響~

抄録

【はじめに】<BR> 当院では腰椎術後3ヶ月間の硬性コルセット着用と当院独自の禁忌動作指導により術部の負担軽減による血腫予防と他椎間の再狭窄予防に努めている。文献等では腰椎術後に腰背筋群の筋萎縮・脂肪組織化が起こると言われているが、実際に経時的な変化を観察した報告はない。今回、経時的な筋萎縮の変化を比較検討し術侵襲とコルセットの影響がどのような関係にあるか考察した。本研究は当院の倫理委員会より承認を受けている。<BR>【対象】<BR> 平成20年4月~平成22年1月までの間で、当院で腰椎椎弓形成術を一椎間・側方進入法で行った症例10例(L2/3:3例L3/4:1例L4/5:6例、男女比8:2、平均年齢72.6歳±7.0)<BR>【方法】<BR> 手術高位の椎間板レベルでのMRI水平断画像を術前・術後平均3ヶ月(2~5ヶ月)・術後平均12か月(9~15ヶ月)の両側多裂筋・脊柱起立筋・大腰筋の面積を解析ソフトAZE Virtual Place Fujin Raijin 3.0022を使用し、除脂肪した純粋な筋断面積を算出した。<BR>【結果】<BR> 多裂筋・脊柱起立筋に関しては両側とも術前~術後平均3ヶ月後の筋断面積には萎縮が見られ、術後平均3ヶ月~平均12ヶ月の間では回復が見られた。大腰筋に関しては両側とも術前~平均12ヶ月の間であまり変化が見られなかった。<BR>【考察】<BR> 伊藤らによるとコルセット着用により体幹筋活動の低下がみられ長期の装着により廃用性の筋力低下が起こる危険性があると報告され、小野瀬らによるとコルセット着用により腰椎前後屈の可動域に制限が生じると報告されている。よって、術侵襲による影響だけでなく当院でのコルセット・禁忌動作による腰部筋活動・可動性低下の影響も考えられる。術後平均3ヶ月から平均12ヶ月の間で両側多裂筋・脊柱起立筋の筋肥大が見られたのも、コルセット・禁忌動作が解除され腰椎の可動域拡大とそれに伴う筋活動量増加によると考えられる。大腰筋に関しては姿勢保持筋の1つではあるが、同時に股関節屈筋として歩行等で働く。また当院で使用している硬性コルセットは下縁が上前腸骨棘までの高さであり、股関節の制動にはあまり関与していない為殆ど変化は見られなかったと考える。<BR> 創部や侵襲した筋組織の癒合や切開した骨の回復までは医師の指示の下、約3ヶ月はコルセット着用・禁忌動作が必要であると当院では考えている。コルセット着用期間終了後には筋萎縮に加え、不動による腰椎軟部組織の拘縮が考えられ他椎間への負担が大きくなり、新たな障害を起こす危険性が考えられる。先行研究では背臥位から殿部を挙上するブリッジ動作や四つ這い保持により腰背筋群の特に多裂筋の筋収縮が多く見られ、退院後も自宅でのセルフエクササイズとして行ってもらうよう患者教育を行っていく必要があると考えた。腰椎の可動性獲得に対しては、当院では長期的なフォローアップをしていない為今後検討していく予知がある。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205625494656
  • NII論文ID
    130006985682
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2011.0.128.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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