Parkinson病に伴う首下がりに対するリハビリテーション効果

DOI
  • 板井 幸太
    医療法人福西会 福西会病院 リハビリテーション科
  • 内山 大也
    医療法人福西会 福西会病院 リハビリテーション科
  • 小田部 道代
    医療法人福西会 福西会病院 臨床検査科
  • 尾畑 十善
    医療法人福西会 福西会病院 神経内科
  • 木村 聡
    医療法人福西会 福西会病院 神経内科
  • 米良 英和
    医療法人福西会 福西会病院 神経内科

書誌事項

タイトル別名
  • ~表面筋電図からみた特徴とアプローチ方法の検討について~

抄録

<p>【はじめに】</p><p>Parkinson病(PD)に伴う首下がりは、定義や原因が明確でなく報告や臨床所見も様々である。当院でも、首下がりに対するリハビリテーション(RH)として腹臥位療法に電気療法・BTX等の併用療法の有用性について報告してきたが、効果が一定せず介入方法に難渋するケースが多い。今回、Wall occipit-test(WOT)に加え表面筋電図(EEG)を用いた評価を実施し、その特徴とそれに応じたアプローチ方法の検討にて効果が得られた為、以下に報告する。</p><p>【対象】</p><p>H23~H27年に当院でRH実施した患者のうちWOT陽性で且つHoern-Yarh分類Ⅲ~Ⅳの3名を対象とし、EEGは入院時と退院時の計2回施行した。</p><p>【方法】</p><p>各期間中のRHは、週6日の介入で2週間(計24回午前・午後で各1回)とした。使用器具はNIHON-KOHDEN社EEG-1714を用い、座位と背臥位にて胸鎖乳突筋(SCM),頭板状筋(SC),僧帽筋上部線維(TzU)を測定した。</p><p>【結果】</p><p>Ⅰ.EEG:初期(Rt./Lt.)⇒最終(Rt./Lt.) ※最大振幅を記載 単位:mv</p><p>〈座位〉</p><p>ⅰ)症例A:SCM (0.1/0.1),SC (0.8/1.3),TzU(0.4/0.3)⇒SCM (0.1/0.3),SC (0.3/0.3),TzU(0.2/0.1)</p><p>ⅱ)症例B:SCM (0.1/0.1),SC (1.0/0.7),TzU(1.1/1.2)⇒SCM (0.1/0.1),SC (0.6/0.2),TzU(0.1/0.3)</p><p>ⅲ)症例C:SCM (0.1/0.1),SC (0.4/1.2),TzU(0.2/0.5)⇒SCM (0.1/0.1),SC (0.2/1.1),TzU(0.1/0.3)</p><p>〈背臥位〉</p><p>ⅰ)症例A:SCM (0.1/0.1),SC (0.6/1.7),TzU(0.5/0.3)⇒SCM (0.2/0.1),SC (0.4/0.2),TzU(0.2/0.2)</p><p>ⅱ)症例B:SCM (0.1/0.1),SC (0.4/0.3),TzU(0.8/0.6)⇒SCM (0.1/0.1),SC (0.8/0.3),TzU(0.2/0.3)</p><p>ⅲ)症例C:SCM (0.3/0.5),SC (0.1/0.2),TzU(0.1/0.3)⇒SCM (0.7/1.0),SC (0.2/0.4),TzU(0.2/0.2)</p><p>Ⅱ.WOT評価:(初期→中間→最終) ※耳孔~肩峰間距離を記載 単位:cm</p><p>ⅰ)症例A:(10.1→6.1→4.5),症例B:(16.7→7.9→4.9),症例C:(21.5→13.2→15.1)</p><p>【考察】</p><p>首下がりにおけるEEGの先行研究では、安静座位で後頸筋群の強い筋放電を認めるが前頸筋群ではほぼ認めず臥位では弛緩すべきSCMの筋放電はさかんになる1)と多数報告されており、当院でも安静座位では3例とも同様の結果を示した。しかし、背臥位では1例は報告通りのSCMの筋放電があった(I群)が、2例はSCMよりもSC,TzUの強い筋放電を認め(Ⅱ群)、一見同様の症状であっても異なる筋放電が生じている事が分かった。その為、腹臥位療法実施後にⅠ群には背臥位での前頸筋群、Ⅱ群には腹臥位での後頸筋群の促通訓練を実施した。その結果、3例ともWOT,EEGでは最大振幅の軽減や数値の改善を認めたが、Ⅰ群で僅かではあるがWOTでの増大を認めた。この要因として、PDに伴う姿勢障害が前頸筋群の短縮と後頸筋群の伸長といった筋のアンバランスをもたらし2)、それが長期化した事で頚椎変形や拘縮といった骨性変化が生じているのではないかと考えた。しかし、今回の介入ではX線評価は実施しておらず、その評価方法の考案も課題として残存している。より客観的な評価とRH効果を図る為、継続した検証を実施していきたい。</p><p>【展望】</p><p>PDは進行性疾患であり、今回のような骨性変化が疑われる症例であっても前・後頸筋群等のターゲットを絞った促通訓練が持続効果を得る一助となる事が考えられた。しかし、症例数が少なく統計学的処理が行えていない為、症例数を増やし有意差の検証など一定の成績が得られるようエビデンスの確立に繋げていきたい。</p><p>【参考文献】</p><p>1) 伊澤 奈々:Neurological Medicine VOL81 No.1 特集Ⅰ神経内科 Parkinson病の首下がり症候群における筋電図所見</p><p>2)目崎 高広:Neurological Medicine VOL81 No.1 特集Ⅰ神経内科 1-8,2014 首下がり症候群の病態生理</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>「研究に際し、対象者と家族に十分な説明を行い同意を得た。また医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金等のサービスは一切受けておらず、利益相反に関する開示項目はない。」</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205625497472
  • NII論文ID
    130005175277
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2016.0_14
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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