腰椎椎間板ヘルニアに対する理学療法の一考察

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タイトル別名
  • ~体幹前屈動作の改善を目指して~

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説明

【はじめに】<BR>  腰椎椎間板ヘルニア(以下,LDH)は,椎間板に繰り返される力学的ストレスによる変性を起因とし発症すると考え,LDHの理学療法では椎間板へのストレスを回避できるような動作方略の再構築が重要だと考える.今回,LDHで入院し,疼痛の訴えが強く,入院中のADL改善に難渋した症例を担当した.神経根ブロックにて疼痛及び神経症状は軽減したが,体幹前屈動作での運動連鎖機能不全が存在していた.理学療法にて,動作方略の再構築に向けたアプローチを行い,体幹前屈動作改善,疼痛軽減に至った為,以下に報告する.<BR> 【症例紹介】<BR>  50歳代,男性.仕事はデスクワーク.昨年12月頃より洗面動作時に下肢痛が出現した.2009年2月8日起床時,腰痛増強にて起き上がれず,当院受診し,翌日入院となった.MRIでは,椎間板変性あり,L5/S1椎体間距離の狭小化,L2/3,L4/5/S1椎間板による脊髄への軽度の圧排が見られた.<BR> 【入院中の経過】<BR>  2月10日)介入開始,2月16日)S1神経根ブロックを施行,2月19日)歩行器歩行開始,2月26日)リハ室での運動療法を開始,3月2日)独歩開始,3月9日)退院.<BR> 【評価:3月11日】<BR>  梨状筋の筋性疼痛が,歩行時(VAS5/10),起居動作時(VAS7/10)に出現し,端坐位10分で椎間板性疼痛(VAS5/10)が出現した.体幹前屈動作では上記の疼痛が混在したような症状(VAS5/10)が出現した.ROMは右股関節屈曲・内旋,SLRで制限を認めた.筋機能は,右大殿筋,左広背筋,右腹横筋,多裂筋で機能低下を認めた.腓腹筋の筋委縮も認めた.端坐位での座圧は左後方.体幹前屈動作では,右寛骨の前方回旋,仙骨のうなずき運動が低下し,下部体幹は左回旋,上部体幹は右回旋であった.<BR> 【アプローチ】<BR>  梨状筋,ハムストリングスの伸張訓練,股関節・体幹機能改善訓練,棒体操,腰椎骨盤リズム改善訓練.尚,アウトカムは体幹前屈動作とした.<BR> 【結果:4月4日】<BR>  体幹前屈動作時の寛骨の前方回旋の左右差は消失,仙骨のうなずき運動も見られた.同動作時の体幹の回旋も軽減.疼痛は消失.<BR> 【考察】<BR>  本症例の仕事はデスクワーク中心で,普段の坐位姿勢から座圧は左後方であり,カップリングモーションにより腰椎は屈曲・右側屈・右回旋しやすい身体環境だと考えられた.洗面動作にて疼痛が出現した事から体幹前屈動作に着目すると,寛骨,仙骨の運動制限によりL5/S1間での過屈曲が生じ,椎間板への圧縮ストレスが生じ,LDH発症の要因となったと考えた.<BR>  体幹前屈動作は上半身重心が前方移動する動作であり,股関節伸展・膝関節屈曲・足関節底屈モーメントが必要となる.ヘルニアによる神経原性筋機能低下が腓腹筋に起こり,膝関節屈曲モーメントを担うハムストリングスが過負荷となる.疼痛と不動による伸張性低下も加わり,寛骨の運動制限を強めたと考えた.アプローチの結果,股関節・体幹機能の改善,腰椎骨盤リズムが改善し,寛骨・仙骨の運動が改善し,動作方略の改善に至り,疼痛軽減したと考えた.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205625746816
  • NII論文ID
    130006985917
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2009.0.76.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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