両下肢浮腫を呈した対麻痺患者に対するポジショニングの検討
書誌事項
- タイトル別名
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- ~レッドコードを使用して~
抄録
【はじめに】<BR> 今回、胸椎破裂骨折(Th11)による完全対麻痺を呈し、両大腿部後面から膝窩にかけての皮下出血を認めていた症例を担当した。本症例に対して、臥床時のポジショニングにレッドコードを使用し、改善を認めたため以下に報告する。<BR>【症例紹介】<BR> 60歳代、男性。転落により受傷。急性期病院で破裂骨折に対し、受傷後9日目に後方固定術施行され、術後25日で当院へ転院された。術後、下肢深部静脈血栓症(以下DVT)を認め、ワーファリンを内服されていた。当院転院時DVTは改善されていたが、両下肢浮腫と両大腿部後面から膝窩にかけての皮下出血を認めていた。本症例の浮腫の原因としては血管調節障害により静脈のうっ帯が生じたこと、下肢の自動運動が消失し両下肢の筋ポンプ作用が欠如したことが考えられた。また、皮下出血に関しては、ワーファリンを内服されていたため、臥位時の圧迫により内出血が生じていたと考えられた。これらの症状に対し、今回は持ち運び可能なレッドコードによる臥床時のポジショニングを試み、浮腫、皮下出血の改善を図りたいと考えた。<BR>【方法】<BR> レッドコードを移動式リフトに取り付け、下肢の挙上を1日4回(各30分)行い、経過を追った。5日ごとに下肢周径を用いて評価を行った(2ヵ月間)。皮下出血は写真を用いて比較した。サスぺンションポイントは膝関節直上とし、ハンギングポイントは膝と足関節とした。ベッドから踵までの距離については、下肢挙上により仙骨部にかかる圧を考慮するため、簡易式体圧・ずれ力同時測定器簡易式体圧・ずれ力同時測定器プレディア(モルテン社製)を用いて仙骨部に対する圧測定を実施し、最も圧の低かった5cmの位置とした。<BR>【結果】<BR> 2ヶ月の計測で大腿周径(パテラ上縁より15cm)では右:47.5cm→41.0cm(変化率:13.7%)、左:38.0cm→37.0cm(2.6%)、大腿周径(パテラ上縁より10cm)では右:44.5cm→35.0cm(21.3%)、左:36.5cm→33.5cm(8.2%)、下腿周径(下腿最大)では右31.5cm→28.5cm(9.5%)、左28.5cm→28.0cm(1.8%)へと浮腫の改善を認めた。皮下出血に関しては約3週間で完全に消失した。<BR>【考察】<BR> 今回、両下肢浮腫と大腿部後面から膝窩部にかけての皮下出血を呈した対麻痺患者に対し、臥床時のポジショニングとしてレッドコードを使用し改善を試みた。レッドコードはクッションで行うポジショニングと異なり、下肢を吊るすことにより完全免荷が可能となる。浮腫に対して下肢の挙上はよく行われるが、臥床時の大腿部後面の圧迫により皮下出血が生じていた本症例にとっては、その方法としてレッドコードが有用であったと考える。また、下肢周径の結果より、大腿周径(10cm、15cm)の位置で、特に変化率が大きい結果となった。これは、レッドコードにより大腿部の免荷が行えたことで皮下出血が改善し、それにより下肢の循環が改善され、浮腫の軽減にもつながったのではないかと考える。
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2009 (0), 81-81, 2009
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205625757184
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- NII論文ID
- 130006985922
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可