MTDLPを通して自己実現に向けて「生活をする人」になった一症例
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- 平山 徹
- 特定医療法人明徳会 佐藤第一病院
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説明
<p>【目的】</p><p>本症例は右傍矢状洞髄膜腫の開頭腫瘍摘出術を施行したことに伴い,うつ状態となり臥床傾向で,退院後の生活を見据えることができない状態であった.</p><p>生活行為向上マネジメント(以下:MTDLP)を導入する事で,症例が本来持っている能力を引き出し,主体的で積極的な生活が送れるようになるかを明らかにするため本研究を行った.</p><p>【症例紹介】</p><p>年齢・性別:60代女性</p><p>家族構成:夫と二人暮らし</p><p>【作業療法評価】※MTDLP開始時</p><p>・FIM:97点(運動項目:66点 認知項目:31点)</p><p>・高次脳機能障害:注意障害,構成障害,視空間失認</p><p>TMT-A:3分4秒</p><p>コース立方体:IQ56</p><p>【介入の方法及び基本方針】</p><p>手術後,14日後にMTDLPの説明を行い,興味・関心チェックリストを用いて,今後の生活における希望を聴取する.家事の項目と体操や散歩など健康教室に通うことが出来ないことの問題点が挙がった.</p><p>生活行為聴き取りシートを用いて,①自宅での家事全般が役割として担えるようになる事と,②健康教室で過ごせる体力をつける事を合意目標とした.満足度と遂行度はいずれも1点であった.更に生活行為アセスメントシートをまとめ,生活行為向上プランを立てる.それを基に実動作を行いながら観察評価を実施し,作業の可能化に向けた課題を本症例とともに考えていく事とした.</p><p>また、具体的な目標を早期に主治医や担当看護師,理学療法士などチームで共有し、バックアップしてもらうようにした.</p><p>【経過】</p><p> MTDLP開始1週間後,病棟生活は自立した.2週間目から家事に関しては模擬的な環境下で洗濯や掃除,料理など反復して練習をした.体力作りはパワーリハや病棟で出来る自主訓練を指導した.この頃から,自身の課題を認識し始め,担当療法士に遂行したい活動を提案し開始する.途中で外泊を試み,実践を通して、家事は自立した.また,2時間以上は活動し続ける事で,体力を向上する事が出来た.外泊後から,自信を取り戻し,3週間目には退院.退院して1ヶ月後には健康教室に通うようになったと報告があった.</p><p>【結果】</p><p>・FIM:125点(運動項目:90点 認知項目:35点)</p><p>・高次脳機能障害:注意障害、構成障害</p><p>TMT-A:2分44秒</p><p>コース立方体:IQ69</p><p>・MTDLP</p><p>合意目標</p><p>① 自宅での家事全般が役割として担えるようになる 満足度・遂行度共に9点</p><p>② 健康教室で過ごせる体力をつける 満足度・遂行度共に9点</p><p>【考察】</p><p>本症例は術後の不安感や無能感といった心理状態に加え,病院での単調な生活の中で自身の役割や価値を見失っていたことから,うつ状態を示していたと推察される.</p><p>その人にとって意味のある作業に焦点を当てた支援の在り方についてMTDLPは推奨をされている.また,脳卒中ガイドラインでは患者・家族に対し,ライフスタイルやリハビリの内容をなどについて,早期からチームにより,情報提供に加えて,教育を行う事が勧められている.</p><p>本症例に対して,MTDLPを用い目標設定のプロセスへの主体的な活動・参加を重視し,実動作を中心とした介入を行なうことで,本症例が作業遂行上の課題を認識することができた.また,チームで情報交換を密にし,関わりを持つことで,常に正のフィードバックが得られ,前向きに物事を考えられるようになった.その過程で目標を達成していくことで自己実現に向けて主体性や有能性に良い影響を及ぼしうつ状態は軽減していったと推察される.</p><p>今回、MTDLPを用いることで,症例にとって大切な作業とともに役割・生きがい,作業の意味を見い出せた.急性期からでも作業を具体化する一つの手法として,患者に提供していきたいと考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本報告は事前に対象者へ研究主旨の説明を行い,署名にて同意を得た.</p>
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2016 (0), 206-206, 2016
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205625763456
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- NII論文ID
- 130005175267
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可