転倒アクシデントレポート分析結果と今後の課題
抄録
【はじめに】<BR> 転倒は、大腿骨近位部骨折や脊椎圧迫骨折などを起こし、運動機能障害から、身体機能・生活機能低下を生じ、最終的に介護や経済的問題をも引き起こす。統計的にも、介護が必要になった主な原因では、脳血管障害(25%)、高齢による衰弱(15%)に続き、転倒・骨折が第3位で11%を占めており、転倒・骨折を予防することが大きな課題の一つとされている。当院には転倒転落予防委員会があり、アクシデントの減少を目的に活動している。今回は、平成20年に当委員会に報告があった転倒のアクシデントレポートを分析し、今後の課題・展望を含めて報告する。<BR>【調査内容および結果】<BR> 平成20年に報告された転倒件数は270件で、年齢は80歳代(46%)、次いで70歳代(27%)、60歳代(15%)となっていた。性差は、男性53%女性47%であった。病棟では、中枢疾患が主に入院している病棟(24%)、次いで回復期病棟(21%)となっていた。時間帯では、3時と18時が8%ずつ、4時と5時と16時が6%ずつ、6時と19時と20時が5%ずつとバラツキがあった。発生場所としては、病室が79%、廊下が9%、トイレが6%となっていた。また、排泄前・後などのトイレ・ベッド間の移乗・移動動作時の転倒件数が120件と高い割合を占めていた。トイレは自分で行いたい、看護師さんに面倒を掛けたくないなどの考えが多いようであった。また転倒の要因としては、床・廊下(8%)、ベッド周囲の環境(20%)などの外的要因によるものに比べ、運動障害(50%)、意識障害・理解力低下(60%)などの内的要因によるものの方が多かった。転倒経験あり(42%)やふらつきを催す薬剤の使用中(23%)のケースも少なくなかった。対策としては、ベッド調整(24%)やベッドサイド整理(33%)の外的要因に対するものと、患者様への指導の徹底(63%)、病態把握や観察の強化(61%)の内的要因に対するものとを組み合わせて行っていた。なお、転倒の要因・対策は複数回答である。<BR>【考察】<BR> 一般的に言われるように今回の調査でも70歳以上の年齢、転倒歴、理解力低下、意識障害、薬剤の使用などの内的要因で転倒の危険性が高くなることがわかった。また、転倒とは内的要因、外的要因が複雑に重なって発生すると言われているようにベッド・トイレ周囲の環境などの外的要因の影響も無視できないこともわかった。その為、看護・介護側の転倒に対する知識・意識向上を目的として職員への転倒防止勉強会などを開催し、その後、患者様への勉強会も開催できればとも考えている。さらに、今後も転倒件数の調査、分析を続け、勉強会へのフィードバックとしての利用も考えている。
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2009 (0), 61-61, 2009
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205625796480
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- NII論文ID
- 130006985943
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可