急性期脳卒中患者の足関節背屈筋に対する随意運動介助型電気刺激(IVES)の効果検討

説明

<p>【目的】</p><p> 近年、脳卒中患者に対し神経機能の回復を目的とした治療的電気刺激が行われている。その中でも随意運動介助型電気刺激(以下IVES)は、運動麻痺を呈した患者の不十分な随意運動を増幅し体性感覚フィードバックを行うため、運動学習を伴った機能回復を期待できる電気治療法であり、麻痺筋に対する随意運動の促通効果が報告されている。脳卒中の下肢麻痺においては、発症から早期ほど回復は良好であるとの報告があり、急性期でのIVESの効果発現が、早期リハビリテーションの質をさらに高めることができると考えられる。一般的に下肢へのIVESは、下垂足に対する足関節背屈筋の促通を目的としているが、下肢へのIVESの効果検討は慢性期の脳卒中患者を対象にした報告が多く、急性期での効果発現に関する報告は少ない。そこで本研究では、急性期脳卒中患者の麻痺側足関節背屈筋に対しIVESを実施し、その臨床効果を検討した。</p><p>【対象と方法】</p><p> 対象は、当院に入院した急性期脳卒中患者で9例とした。Brunnstrom-stageⅡが5例、Ⅲが3例、Ⅳが1例で、発症からIVES介入までの期間は9.0±5.6日であった。介入は椅子座位で1日100回の背屈運動を1週間、計6回実施した。刺激に合わせ足関節の背屈随意運動を行うよう指示した。IVESには低周波治療器IVES+(オージー技研株式会社製)を用い、電極位置は麻痺側前脛骨筋、総腓骨神経とした。パラメーターは周波数35Hz、パルス幅50μsの矩形波を使用した。刺激強度は疼痛が出ない範囲内で関節運動が起こる程度とし、刺激時間2秒、休止時間1秒とした。評価は計6回のIVES介入前後で実施した。評価項目は膝関節90°での自動足関節背屈角度、Fugl-Meyer Assessment 下肢項目(以下FMA)、Modified Ashworth Scale(以下MAS)とした。統計解析は、IVES介入前後の測定値の変化をWilcoxon検定で分析し、統計学的有意水準は5%未満とした。</p><p>【結果】</p><p> 自動足関節背屈角度は-25±30°から-8.3±22.9°となり、有意な改善を認めた。FMAは全対象で改善がみられ、12.7±9.4点から19.9±10.9点となった。MASは1症例において改善を認めた。内省報告は全症例肯定的でIVES介入による副作用はなかった。</p><p>【考察】</p><p> IVES介入後の自動足関節背屈角度、FMAにおいて改善がみられた。介入は急性期であり、通常訓練や自然回復の影響を受ける時期ではあるが、1週間の介入で自動足関節背屈角度に有意な改善を認めたこと、全対象に副作用が出なかったことから、急性期においてIVESは、安全に、かつ効果的に作用すると考えられる。また、介入前の時点で前脛骨筋の随意収縮がみられなかった対象も3例含まれていたが、3例ともに介入後に背屈随意運動が可能となっていることから、随意運動ができなくても電気刺激に合わせ運動イメージを反復することで、随意運動を伴った体性感覚フィードバックと同様の効果が期待できる可能性も示唆された。今後は、麻痺の重症度によるIVESの効果比較などについても、症例数を増やし検討を進めていきたい。</p><p>【まとめ】</p><p> 本研究はIVESが急性期における足関節背屈筋の機能回復に対し効果的である可能性を示した。入院期間の短い急性期でのリハビリでIVES が下肢機能改善の一助になれば、臨床的意義も高いと考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p> 本研究は、事前に所属施設の倫理審査委員会で研究の倫理性について審査を受け、承認を得た(承認日 平成27年8月18日)。また研究実施に際し,対象者に研究について十分な説明を行い,同意を得た。 製薬企業や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費、株式、サービス等は一切受けておらず、利益相反に関する開示事項はない。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205625815936
  • NII論文ID
    130005175299
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2016.0_176
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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