下腿切断後の義足患者における断端の管理
書誌事項
- タイトル別名
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- 歩行時の断端への影響と義足の調整
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説明
【はじめに】<BR> 今回、ガス壊疽による下腿切断を行い、義足を作成した症例を担当した。独歩での歩行獲得も退院前外泊訓練時の長時間歩行で右下腿切断断端(以下断端)に皮膚出血・剥離を認めたために退院延期。再度、断端の管理と義足の調整を行うことで再発を防ぎ、自宅復帰を果たした。よって歩行時における断端への影響と義足の調整について考察したので以下に報告する。<BR>【症例紹介】<BR> 年齢:50代、性別:男性、診断名:ガス壊疽による右下腿切断術後、手術日:平成20年11月下旬<BR>【理学療法評価】<BR> 断端局所状態)右下腿切断:膝下10cm、義足)PTBモジュラー義足、筋力)腸腰筋5、大殿筋4、内・外転筋3~4、大腿四頭筋4、ハムストリングス4<BR>【経過】<BR> 平成21年1月下旬に当院入院、リハビリテーション開始(交互歩行器)、2月下旬に外泊訓練時に皮膚出血、3週間の治癒のため歩行困難、3月中旬より歩行再開、4月上旬に自宅復帰(独歩)<BR>【問題点】<BR> 脛骨粗面下の皮膚出血・剥離(ソケット前面への圧迫集中、床反力による膝伸展モーメント活動)<BR>【対処点】<BR> 足継手のアライメントの調整、ソケット前部の接触面の変更、入浴前後の断端周径の差に対する弾性サポーターの調整<BR>【考察】<BR> 切断患者の場合、切断の位置は歩行に大きく影響を及ぼし、特に膝伸展筋は早期の歩行獲得には不可欠である。対象者は膝下10cmでの下腿切断のために膝伸展筋は機能していた。リハビリテーションの介入としては体幹・両下肢の筋力強化や義足での立位荷重訓練による重心移動やバランスと階段・歩行練習を行うことで独歩での早期歩行の獲得ができた。しかし、長時間歩行において断端への圧迫・摩擦を招き、皮膚出血・剥離を起こした。<BR> 原因としては歩行の立脚初期と終期における断端への影響が考えられる。立脚初期の関節モーメントは股伸展・膝伸展・足背屈モーメントが各関節に働くが対象者は切断により前脛骨筋・下腿三頭筋が働かない場合、足関節における制御は継手による底背屈の一方向になるため、床反力は膝関節モーメントへ影響を及ぼす。また立脚後期の膝伸展モーメントによる下腿の前方への推進運動により脛骨とソケット間に剪弾力が加わり、圧迫・摩擦を起こした。今回の場合、屋外での歩行は路面の形態により床反力が異なるためにより脛骨へ負担がかかったと考えられる。よって股関節伸展・内外転筋群の筋力強化や足継手の足関節可動範囲を背屈0~5度の範囲で背屈制動にし、立脚相の支持機能を高めた。次にソケットのトリミングによる前面への局所集中から脛骨周辺での接触面へと変更することで脛骨とソケット間の過度の圧迫を回避した。また入浴前後の断端周径の差に対して弾性サポーターの厚さで調整し、日中の義足着用で適合性を図り、糖尿病による切断のために本人への断端管理・指導の徹底に努める事で再発を防ぐことができ、独歩での自宅復帰を果たした。
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2009 (0), 94-94, 2009
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205625820288
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- NII論文ID
- 130006985968
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可