離床の拡大が与えた影響
-
- 篠原 まり
- 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
書誌事項
- タイトル別名
-
- ~集団活動を用いた離床の取り組み~
説明
<p>【はじめに】</p><p>上田らは、高齢者の全身的な廃用症候群を防ぐには、1日4時間以上の座位時間の確保を必要としている。しかし、実際は限られたリハビリ介入時のみの時間では、4時間以上の離床は難しい。そこで、病棟患者全員を対象に離床中の活動の提供を行い、離床時間の拡大を図った。その中でも離床の関わり方が良い影響を与えた2症例を報告する。</p><p>【症例紹介】</p><p>症例1は大腿骨頚部骨折を呈した90歳代の女性で、発症から約1ヶ月後当院入院となった。病前は10人程度の共同生活をしており、食器運びや食事の準備を日課として行っていた。他人の世話をすることが好きで同居している人の相談に乗ることや手伝いをすることが多かった。しかし、受傷したことで自信をなくし消極的な発言が多く臥床傾向となっていた。症例2は誤嚥性肺炎に伴う二次障害で廃用症候群を呈した80歳代の女性で、発症後約2ヶ月で当院入院となった。病前は主婦として家事全般を行っていた。食べることが好きで料理が生きがいであった。入院期間が長く、日中臥床傾向で活動に対する意欲も低下し離床の促しに強く拒否を認めていた。</p><p>【取り組み内容】</p><p>毎日11時から自由参加で集団で行うラジオ体操・起立訓練を行った。16時から集団作業活動として机上で季節に合った病棟の飾り作りやカレンダー作成等を提供した。</p><p>【取り組みによる変化】</p><p>症例1は、16時からの活動において他患者に作業の振り分けをしてもらう等の他患者に積極的に関わるサポート的存在を担ってもらった。その結果、自ら他患者の世話を行い指示や指導を行う姿が見られるようになった。さらに集団で行うラジオ体操・起立訓練に自ら参加し、自主訓練を積極的に実施するようになった。症例2は、16時からの活動で元主婦や食に関心が高い患者を集め、食事の献立表や新聞広告を用いてレシピについての会話や、何の食材が必要かを考える活動を行ってもらった。その結果、離床に対する拒否がなくなり、関心・興味があることを共有できる集団で他患者に料理の方法を教える姿、「また話そうね」という発言も認め、自ら離床するようになり毎日11時からのラジオ体操にも欠かさず参加するようになった。</p><p>【考察】</p><p>症例1は、入院前から集団の中で人の世話をすることが生きがいで、集団活動で他患者に積極的に関わるサポート的役割を与えることで自己効力感が生まれ、自ら他患者の世話をする等の自発性を引き出せたと考える。集団の中で自分の立場が確立し集団活動を楽しみにされる発言や集団で行うラジオ体操・起立訓練に積極的に参加するようになり、それにより自主訓練も積極的に取り組むようになったと考える。症例2では、集団活動の中に関心のある事を取り入れ、コミュニケーションの場で以前の生活より主婦をしていたこと、料理や食に関心が高いという共通点を持つ患者を集めて活動を行うことで、関心・興味があることを共有できたと考える。さらに、その日に食べる食事に関連づけていくことで集団の場が楽しくなり、離床に対する拒否も消失したと考える。よって本人にとって生きがいの場となり、自発的に離床を行い集団活動、毎日のラジオ体操への参加が可能になったと考える。また離床が習慣化したことで1日のスケジュールが形成され、日中臥床傾向であったことの改善、さらに生活リズムが改善し、相乗効果が生まれたと考える。ただ離床を促し受動的に離床するのではなく、集団の中で役割の獲得や趣味を共有していけるような集団活動を行うことが、自発性を引き出し離床時間を拡大させることに良い影響を与える一因となると考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に基づき説明と同意を得て実施した。</p>
収録刊行物
-
- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
-
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2016 (0), 180-180, 2016
九州理学療法士・作業療法士合同学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205625826304
-
- NII論文ID
- 130005175310
-
- ISSN
- 24238899
- 09152032
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可