ルーブリックを用いたグループディスカッション評価方法の検討

DOI
  • 四元 祐子
    学校法人原田学園 鹿児島医療技術専門学校 作業療法学科
  • 藤田 賢太郎
    学校法人原田学園 鹿児島医療技術専門学校 作業療法学科
  • 山下 喬之
    学校法人原田学園 鹿児島医療技術専門学校 理学療法学科

抄録

<p>【はじめに】</p><p>2015年5月の教育再生実行会議第七次提言において、学生が主体的に行動し、知識を活かす実践・体験型教育の導入が求められ、教育現場は多様化する学生に対し更なる教育方法の変化が求められている。しかし、作業療法養成校で行われる授業は、作業療法学生(以下、学生)が教員の授業を受動的に聞くという方法が一般的である。今回、学生が能動的に学ぶプロセス自体を習得することを目的に少人数のグループ制問題基盤型学習を用いた授業を行った。この授業の教育目標は「課題について考え、調べ、ディスカッションするという役割と経験を通して、新たな知見を得て、自ら勉強をする方法を修得する」ことである。この授業の要は学生間でのディスカッションにあり、学生に求めるディスカッションにおけるコミュニケーション能力は「少人数で対面した状況下で双方向的に行われる言語運用の仕方、運用の場や相手に関する状況を読む力、相手の表情や視線などの非言語を読み取る力、そして振る舞い」とした。しかし、この能力を評価するために明確な評価軸がないことから、教員間で評価に差が生じることが懸念された。そのため、評価の一案として、パフォーマンス評価の教育ツールであるルーブリックを用いた評価表を開発した。</p><p>【対象と方法】</p><p>ルーブリックとは、評価尺度と評価基準を示した記述語から構成される一覧表を指し、表の枠内に教育目標に準拠した評価基準が段階別に記されている。授業は1グループ7名の学生と1名の教員(テューター)で構成し、学生は課題に対してディスカッションを重ね、その過程でうまれる必要な知識を自ら調べ、情報交換をし、まとめ、発表をする手順で進めた。評価の対象となる学生に求めるコミュニケーション能力は、学生のグループディスカッションの過程で観察しながら評価を行う。その際の評価について、1)ルーブリックを用いることのメリット。2)点数尺度とは異なる段階設定。3)グループディスカッション中に考えられる学生の動向や発言内容を念頭に置き、教育目標に準拠した評価項目と各評価尺度、基準の詳細な設定について経験年数10年以上の教員3名により検討し評価表を作成した。つぎに、作成した評価表を1グループに試用した。</p><p>【結果と考察】</p><p>1)ルーブリックを用いるメリットは、学生の成長度を可視化・事後学習に繋げられる可能性が示唆された。2)学生が評価表を見た時に、自身の成長度合いがわかるように「マスター」が最も望ましい行動とし「中堅」「見習い」と身近に感じる段階尺度とした。3)各項目と評価基準は1週間約10時間をかけて、言語の統一化を図った。評価用紙は短時間で、効率的に評価できるようにA4用紙1枚に集約した。4)ルーブリックを用いる事で評価内容と評価基準が明確になり、評価者の判断の迷いを軽減できた。また、1人あたりの評価時間は約3分と短時間の評価が可能であった。検討事項は、1名の教員がテューター役割と評価者役割の2役を担うことから、事前に評価内容を読み込み、評価に臨む必要性があるため、教員のマンパワーを増やし1人1役を担うことも挙げられた。ルーブリックを用いたグループディスカッション評価の開発から、ディスカッション中の学生の発言内容、振る舞いが可視化でき、客観的な評価ができる事が示唆された。今後の展望はこの評価表を通して教員と学生がディスカッションにおけるコミュニケーション能力を共に把握して教育に臨み、事後の振り返り学習にも活用出来る評価内容へブラッシュアップしていく予定である。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言を遵守し、利益相反に関する開示事項はないものである。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205625928576
  • NII論文ID
    130005175425
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2016.0_256
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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