大腿骨頚部骨折術後理学療法計画の検討

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  • 受傷前独歩・痴呆なし症例において

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【はじめに】<BR> 大腿骨頚部骨折が年々増加する中、廃用の予防、機能・能力の向上、更にはQOLの向上と理学療法に課せられる課題は多い。急性期病院においては、在院日数の短縮化が進み、受傷後早期における機能向上の重要性が挙げられる。今回、当院において術後理学療法(以下リハ)において患肢への荷重率、立位・歩行訓練レベルを経時的に評価し、リハにおける治療計画の検討を試みたので報告する。【対象】 平成14年12月から平成15年12月までの12ヶ月間に当院において大腿骨頚部・頚基部・転子部骨折に対し骨接合術を実施し、術後翌日より全荷重が許可された患者50名(男性10名・女性40名、平均年齢80.4±7.4歳)を対象とした。平均在院日数は31.9±10.0日、術後リハ平均期間は17.6±6.1日であった。対象患者は痴呆がなく受傷前歩行能力が独歩自立と限定した。<BR>【方法】<BR> 以下の点を術後リハビリ実施毎に評価し、経時的変化を検討した。<BR> 1.患肢への荷重度合い(荷重率%)<BR> 2.訓練時の歩行能力<BR>患肢荷重度合いは体重計に一脚ずつのせ、平行棒を支持させた状態で患側下肢に疼痛自制内で最大限に荷重させ、その値と体重との比率とした。歩行能力は、平行棒内立位・平行棒内歩行・歩行器歩行・杖歩行の4段階に分類した。理学療法開始時に改訂長谷川式簡易知能評価スケールを用い20点以下を痴呆ありとし、全員に痴呆は認められなかった。 統計学的処理にはt検定と単回帰分析を用い、P<0.05をもって統計的有意とした。<BR>【結果】<BR> 対象患者のリハ終了時の歩行訓練レベルは平行棒内歩行1名、歩行器歩行8名、杖歩行39名、独歩2名であった。平行棒内歩行までに留まった患者を除いては術後より平行棒内立位訓練開始までの平均期間は2.6±1.0日、平行棒内歩行訓練までは3.8±2.0日、歩行器歩行訓練開始までは6.9±3.5日、杖歩行訓練までは11.8±5.6日であった。立位・歩行訓練時の患肢への平均荷重率は、平行棒内立位24.5±13.6%、平行棒内歩行31.9±9.5%、歩行器歩行46.1±11.7%、杖歩行64.1±13.5%であった。平行棒内歩行の荷重率に統計学的有意差は認められなかったが平行棒内立位より増大する傾向にあった。平行棒内歩行・歩行器歩行・杖歩行訓練の間の荷重率は有意な差をもって増大することが示唆された。リハ終了時の歩行訓練レベルは杖歩行まで到達した群と歩行器歩行まで到達した群の2群に分けられたが後者の方が有意に在院日数・術後リハ期間は短かった(在院日数:杖歩行到達群33.3±10.3日、歩行器歩行到達群26±5.4日、術後リハ期間:杖歩行到達群:18.4±6.2日、歩行器歩行到達群:14.9±3.7日)。また、平行棒内歩行群・歩行器歩行群において、各歩行訓練まで必要とした期間とその時点での患肢への荷重率には有意な差が認められなった。術後リハにおける立位・歩行訓練レベルと荷重率、立位・歩行訓練開始までに必要とした期間との間における単回帰分析の結果は両者とも危険率1%未満で有意であった。<BR>【考察】<BR> 大腿骨頚部骨折は寝たきりになりやすい外傷として重要視され、リハの領域においても効率的な治療の確立が必要とされる。特に痴呆がなく受傷前独歩であった患者の歩行再獲得は日常生活・社会復帰のためにも重要であり、この患者層に対して急性期病院において術後リハに求められることは、早期離床にはじまり機能の再獲得に向けての訓練の導入と考える。今回調査対象とした受傷前独歩であった患者は急性期でのリハ終了時の移動能力に差はみられるものの、術後リハ実施日数が歩行器歩行訓練到達群の方が杖歩行訓練到達群より有意に短かったことや各歩行訓練までに必要とした日数・荷重率に有意な差が認められなかったことより歩行器と杖歩行訓練到達群はともに一定のリハ進行であったことが予測される。杖・歩行器歩行到達群は対象患者のうち98%であり、今回の結果より立位・歩行訓練開始までの日数と荷重率を用いて治療計画の作成は可能と考えられた。つまり当院では、平行棒内立位訓練開始まで術後2日・荷重率は25%、平行棒内歩行では術後4日・荷重率は35%、歩行器歩行では術後7日・荷重率50%、杖歩行では術後11日・荷重率65%と推察された。治療計画をたてることで患者のリハビリ進行の確認とさらに受傷前歩行能力が独歩であった患者の機能的な到達時期の予測が可能となり、急性期病院での患者の迅速な治療計画が可能となると考える。<BR>【まとめ】<BR> 当院において受傷前独歩であった大腿骨頚部骨折患者の術後リハにおいて患肢荷重率、立位歩行訓練開始までの期間には有意な経時的変化が認められ機能予測が行えた。機能予測を用いて理学療法計画の立案が可能であり、今後の理学療法に活用していきたい。

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  • CRID
    1390001205625966080
  • NII Article ID
    130006986131
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2004.0.20.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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