腸内アルカリ化による塩酸イリノテカンの体内動態

説明

腸内アルカリ化による塩酸イリノテカンの体内動態熊本大病院薬 ○青木 藍、濱田 哲暢、齋藤 秀之【目的】塩酸イリノテカン(CPT-11)は、生体内で活性代謝物SN-38へ変換されて抗腫瘍効果を示す抗癌薬である。CPT-11およびSN-38は、水溶液中ではlactoneおよびcarboxylateの平衡状態にあり、lactoneの細胞傷害活性が高いとされる。本薬物は下痢の発生が臨床上問題である。発生原因は胆汁中へ排泄されるSN-38のグルクロン酸抱合体が腸内細菌によりSN-38へ変換され、細胞傷害を示すことにある。下痢の回避として腸内アルカリ化が検討されている。アルカリ条件下ではCPT-11およびSN-38はcarboxylateとして存在するため細胞傷害性は低いと考えられる。しかし、in vitroにおいて、carboxylateはlactoneに比べて腸管吸収されにくいという報告がある。すなわち、腸内アルカリ化によりCPT-11およびSN-38の腸管循環に対する影響が予測されるが、体内動態への影響は明らかではない。そこで本研究では、CPT-11およびSN-38の体内動態に対する腸内アルカリ化の影響を検討した。【方法】雄性日本白色系兎に炭酸水素ナトリウムを飲料水として4日間連日経口投与し、腸内をアルカリ化した。炭酸水素ナトリウムを経口投与後、CPT-11を耳静脈より投与し、経時的に採血を行った。対照群には水を与え比較した。CPT-11およびSN-38の血漿中濃度はlactoneとcarboxylateに分けてHPLCにより定量した。【結果・考察】アルカリ化群と対象群における、CPT-11およびSN-38のlactoneとcarboxylateそれぞれの薬物動態パラメータに有意差は認められなかった。活性体であるlactoneの体内動態に影響しないことから、炭酸水素ナトリウムの投与は腸内の薬物をcarboxylateとして存在させるが、腸管循環により腸管から再吸収される薬物の体内動態に影響しないと推定される。以上の結果により、CPT-11の下痢の抑制に炭酸水素ナトリウムを併用しても、抗腫瘍効果に対する影響は少ないと考えられる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205626219136
  • NII論文ID
    130006986323
  • DOI
    10.14896/jssxmeeting.18.0.217.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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