理学療法士がグループホームに関わることによる利用者の身体機能維持の可能性

DOI

抄録

<p>【目的】</p><p>認知症高齢者グループホーム(以下GH )にはリハビリ専門職の配置義務はないが、H27年2月からGHに週1回半日非常勤職員として勤務し、利用者の身体機能維持に向けた活動を行っている。2013年の公益社団法人日本認知症GH協会の報告では、利用者の高齢化と入居期間の長期化による身体機能の低下が指摘されており、現在関わっているGHでの利用者の入居時から現在までの身体機能の変化を調査した。さらに1年間の理学療法士としての活動の報告と今後の課題について検討したので報告する。</p><p>【対象】</p><p>対象施設は1ユニット9名のGH(H21年1月開設)で、対象は利用者のうちH27年2月からH28年2月までの1年間経過を見ることができた8名(男性3名女性5名、平均年齢86.5±14.7歳)である。</p><p>【方法】</p><p>対象者のカルテや情報書から入居時の①身体機能に関する主な診断名②入居期間、入居時とH27年2月末(以下1年前)とH28年2月末(以下現在)の③要介護度④施設内の主な移動方法⑤障害老人の日常生活自立度(以下自立度)⑥認知症老人の日常生活自立度(以下認知症自立度)を抽出した。</p><p>【結果】</p><p>①脳梗塞3名、くも膜下出血1名、大腿骨頚部骨折1名、肺癌1名、高血圧2名②入居期間:平均6.3年±1.0年(4年5ヶ月~7年1ヶ月)③平均要介護度:入居時1.5±0.5、1年前3.1±1.0、現在3.6±0.7④施設内の主な移動方法:入居時は歩行自立3名、歩行見守り4名、車椅子自立1名、1年前は歩行見守り3名、介助歩行2名、車椅子自立1名、車椅子介助2名、現在は歩行見守り1名、介助歩行2名、車椅子自立1名、車椅子介助4名⑤自立度は入居時A1:2名A2:6名、1年前A2:3名B1:4名B2:1名、現在A2:1名B1:3名B2:4名⑥入居時Ⅱa:4名Ⅱb:1名Ⅲa:2名Ⅲb:1名、1年前Ⅱb:2名Ⅲa:1名Ⅲb:4名Ⅳ:1名、現在Ⅱb:2名Ⅲa:1名Ⅲb:2名Ⅳ:3名であった。</p><p>【活動内容】</p><p>活動開始当初から運動療法を中心とした機能訓練を行い、徐々に集団体操やレクリエーション、屋外での活動の補助、排泄や食事介助へ直接の関わり、介護スタッフへの座位ポジショニングや介助の指導、福祉用具(スリングバー、シャワーキャリー)の導入やトイレ手すりの改修を行った。その他の活動として月1回GHスタッフによるケア会議への参加(担当者会議を含む)と2ヶ月に1回の運営推進会議への参加を行っている。</p><p>【考察】</p><p>今回の調査で対象者の入居期間の長期化と身体機能の低下が示された。しかし、理学療法士による1年間の関わりにより介護度や移動能力を維持できたと思われる対象者もいた。具体的には起立、歩行訓練を行い、介助の指導を行ったことで移乗動作の安定性向上が見られた対象者であった。1年間関わってきた中で最も感じているのが利用者の身体機能低下と認知症やその他疾患の進行によるGHスタッフの介護負担増加であった。さらに屋外や集団での活動が行いにくくなり、利用者のQOL低下へつながると推測された。身体機能低下と介護負担増加に対して、利用者の実際のADL場面での動きを確認し、時には理学療法士自身が実際のADL場面で介助を行い、GHスタッフの意見も傾聴しその後の経過を確認することで身体機能を維持するために何が必要かを考え活動を行った。またケアプランの中に運動療法を取り入れてもらうことで、利用者・GHスタッフ双方の運動に対する意識を高めている。今後も利用者の身体機能維持に努めながら、認知機能も含めた利用者の変化に応じた介助や運動の指導を継続して行い、利用者のQOL維持に対する活動や参加を支援していきたい。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>研究の実施に際し、対象者・家族に対して研究について文章及び口頭にて説明を行い、同意を得た。 </p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205626276736
  • NII論文ID
    130005175494
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2016.0_68
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ