学習ストラテジー調査と成績との関連性

DOI
  • 新地 昭彦
    財団法人潤和リハビリテーション振興財団 宮崎リハビリテーション学院 理学療法学科

抄録

<p>【目的】</p><p>学習者の意識的、無意識的な学習に対する様々な工夫を、学習ストラテジー(以下、ストラテジー)と言い、学習成果の差が生じる要因の一つに、ストラテジー活用の違いが関連していると考えられる。今回、学生に対しストラテジーの活用傾向を調査し、結果と成績との関連性調べ、学習支援および学習環境作りのあり方を検討することを目的し報告する。</p><p>【方法】</p><p>平成27年度、理学療法学科2年生44名に、全科目試験終了後にOxfordが考案した言語学習ストラテジー調査法SILL(Strategy Inventory for Language Learning)をもとに、独自に作成したアンケート調査6分類(記憶12項目・認知12項目・補償2項目・メタ認知8項目・情意6項目・社会5項目)の全45項目を各4段階スコアにて回答してもらい、スコアが高い程、ストラテジー活用が高い事とした。結果から、全体および、分類毎の内的整合性を示すクロンバックのα信頼性係数(以下、α係数)を計測し、α係数の結果に応じて、基本統計量、各分類のスコア間の分散分析とTukey法による多重比較の検定を行い、スコアと成績との関連性を調べた。(基本統計Microsoft Excel 2010使用、P<0.05)</p><p>【結果】</p><p>α係数は、全体で0.89、分類毎で記憶0.63、認知0.73、補償0.21、メタ認知0.72、情意0.39、社会0.71で、α係数の低い補償・情意は除外し、4分類37項目にて分析をおこなった。また補償、情意除外後の全体のα係数は0.89であった。ストラテジーの37項目の平均値は2.8(標準偏差±0.85)で、平均値以上を示したのは18項目。平均値の高い順から、“重要なポイントをマークする(記憶)”“自分で調べる(認知)”“友達に教えてもらう(社会)”などで、低い順では、""予習をする(記憶)""""図書館の利用(認知)""""教師への質問(社会)""などであった。分散分析の結果では、各分類のスコア間に主効果が認められた。多重比較の結果、記憶スコア1より3,1より4、認知スコア1より3,1より4,2より3,2より4、メタ認知スコア1より3,1より4,2より3で有意差が認められたものの、社会には有意差が認められなかった。</p><p>【考察】</p><p>学生は、学習を行うにあたり多種類のストラテジーを活用し、意識的、無意識的に工夫していることが分かった。比較の結果、スコアが高いほど、高成績である関連性が認められ、なお高低2群に分かれる傾向となった。また今回、社会には有意差が認められず再調査の必要性もあるが、グループ学習など、“学生同士の協力”は行うものの、“教師への質問”のスコアは低かった。これは学生の教員に対するコミュニケーション不足も考えられるが、教員への質問など否定的評価を受けるようなストラテジーを学生が好まない傾向もあると思われ、教授側への問題提起となる結果となった。また、ストラテジーが高いにも関わらず低成績者もいることなど、具体的な活用法などの分析も必要と思われる。</p><p>【まとめ】</p><p>今回の調査で、学生が活用するストラテジーの一部を把握できたと思われる。今後、新しいストラテジーを含む再調査を行い、学習者の環境要因も考慮しながら、個々の学習能力に応じた有効的なストラテジー活用の指導が出来るようになることが、今後より良い学習支援につながるものと思われる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>当研究を遂行するにあたり、当機関の倫理委員会の承認を受け、ヘルシンキ宣言に従い、アンケート調査に際しては、調査実施後、学生に研究目的と内容、また個人情報などの漏洩がないことを説明し同意を得た者に対し行った</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205626298624
  • NII論文ID
    130005175371
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2016.0_38
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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