デイケアにおいてせん妄を併発した認知症利用者との関わり

DOI

抄録

<p>【はじめに】</p><p>今回、認知症に加え、せん妄症状と考えられる精神機能面の日内変動により、周辺症状が増悪し、他利用者との関係性不良に陥った症例を担当した。関わりの中で、介入に多くの工夫を要した。得られた結果に考察を加え報告する。</p><p>【事例紹介】</p><p>80代女性、脳血管性認知症。平成2年脳出血による左片麻痺。病前は花屋を営まれ人当たりのよい性格。平成26年4月当デイケア利用開始。当初は笑顔も多く見られた。コミュニケーションは表出・理解共に短文レベル。ADLは食事動作以外介助が必要で、日中は車イスで過ごしている。</p><p>【評価】</p><p>N式老年者精神状態評価尺度は10/50、家族より、以前から入眠前は不穏あり。平成27年10月頃から夜間に物を投げ、家族を呼ぶ事が増えた。同年12月受診し、ラクナ脳梗塞の増悪、脳の委縮が見られるとの診断あり。同時期にデイケアでは、昼食後より眠気が出現すると原因が特定できない不安を訴え、スタッフを連呼した。入眠を促すも拒否あり。個別で対応するが不穏が収まらず他利用者に注意されるなど関係性が悪化、症状増悪の悪循環が見られた。また、午前中に楽しく実施していたちぎり絵が午後には紙の裏表が分からない、貼った物を剥がす、説明を聞けず怒り出す場面あり。固執思考、歩行の介助量の増加、異食行為なども見られた。午前と比較し午後の時間に、精神機能面の日内変動が見られた事からせん妄の要素が強いのではと考えDSM-Ⅴ-TRの診断基準から評価を進め、多くの項目で症状が一致した。</p><p>【介入方法】</p><p>せん妄に対する介入として、①睡眠リズムの改善、②症例の不安因子の軽減を図る事とした。①在宅での眠剤の使用と入眠を促す環境設定を家族へ伝達。デイケアでは入眠前に不穏になる為、比較的落ち着いている午前中に短時間仮眠を確保し、午後の眠気の改善を図った。その際、不安の訴えがあるが個別対応では過度に依存し興奮する為、遠位で見守る様に対応を周知した。②セラピストとの関わりでリラクゼーションの要素を追加し、午後のスケジュールを固定化した。また他利用者と良い関わりが持てる様、ちぎり絵の作品制作を役割分担し、共同作業を設定した。</p><p>【結果】</p><p>3ヶ月の介入後、夜間の不穏症状は減少。N式老年者用精神状態尺度で16/50と向上し、関心・意欲・交流、会話、見当識の項目で変化が見られた。午後からちぎり絵に集中し、他利用者と笑顔でコミュニケーションをとる場面が見られた。作業中はスタッフを呼ぶ事が減り、「以前に比べ手がとられなくなった」との意見が聞かれた。</p><p>【考察】</p><p>睡眠リズムの改善、不安因子の軽減にて症状軽減した事から、せん妄による精神症状の悪化であったと考える。睡眠に関して、午後は眠気により覚醒が低下し、せん妄症状を助長していると考察した。結果、興奮し入眠に至らず、不穏状態に陥ったと考えた。短時間仮眠は、記憶や認知作業の向上、夜間睡眠効率が高まると言われており、午前中に仮眠を確保できた事は有効であったと考える。関わりの工夫として個別介入ではなく、遠目から見守る事をスタッフで周知できた事が過度な依存を抑制したと考える。また人との交流を好む症例が、言語によるコミュニケーションが取れず、孤立感からスタッフを連呼し他利用者との関係性は不良となっていた。そこで、役割分担が可能で比較的単純なコミュニケーションで活動参加が可能なちぎり絵を提示した。他利用者と関わりを持てる活動への参加形態を工夫したことで孤立感に伴うストレスが緩和しせん妄の誘発が抑えられたと考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>今回、事例発表をするにあたり、対象者家族に発表の内容について説明し、同意を得ている。</p>

収録刊行物

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205626315008
  • NII論文ID
    130005175410
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2016.0_278
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ