半側空間無視患者の障害に対する自己意識性
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- ADLの自己評価による検討
Abstract
【目的】<BR>自己意識性(self-awareness)とは,主観性を維持しながら客観的に自己を知覚する能力である.近年,この自己意識性と半側空間無視(unilateral spatial neglect:USN)の関係性について報告されてきている.今回の研究では,脳血管障害患者が有する自己のADL能力に対する認識を通して,自己意識性と半側空間無視の病態の関連性を統計学的に検討することを目的とした.<BR>【対象】<BR>脳血管障害で当院入院中の患者17例(USN群8例,USNを呈さない左片麻痺群4例,右片麻痺群5例)であった.調査は当院の施設長および当科責任者の許可を得たうえで,患者あるいはその家族にあらかじめ研究の主旨や手順等に関する説明を行い,書面にて同意を得た.<BR>【方法】<BR>ADL能力の指標としてFIM(認知項目を除く)を患者本人と担当セラピストに評価してもらい,患者採点から担当セラピスト採点を減算した値を「FIM見積もり誤差」として算出した.さらに,USNの机上検査であるBIT行動性無視検査日本版の通常検査と,行動検査のうち電話,音読,時計,書写の4項目を実施した.<BR>統計処理は,FIM見積り誤差とBIT総計得点,通常検査得点,行動検査得点間について,母集団を全群,USN群+左片麻痺群,USN群の3つに分類した各群でSpearmanの相関係数で算出するとともに, USN群,USNを呈さない左片麻痺群,右片麻痺群間におけるFIM見積り誤差をKruskal Wallis testとSteel Dawas検定を用いて多重比較した.統計処理にはエクセル統計2008(株式会社エミス)ソフトを使用した.<BR>【結果】<BR>順位相関について検討した結果,母集団を全群にした場合でのみ,BIT総計,通常検査,行動検査の各得点とFIM見積り誤差に有意な負の相関が認められた.また,FIM見積り誤差を多重比較した結果,USN群と右片麻痺群との間に有意差が確認された(p<0.05).<BR>【考察】<BR>上述した結果から,全群においてBIT総計,通常検査,行動検査とFIM見積り誤差に有意な負の相関が見られた.これはBIT得点が低い,つまりUSN症状が強いほど,自己のADL能力を過大評価している可能性を示している.しかしながら,USN群+左片麻痺群やUSN群ではBIT総計,通常検査,行動検査とFIM見積り誤差に相関を示さなかった.これは右片麻痺群がUSN群とは対照的に,自己のADL能力について過小評価している可能性がある.また多重比較した結果,USN群と右片麻痺群間に有意差が確認されたことからも,USN群は右片麻痺群に比べ自己を過大評価していることが示唆される.<BR>今回の研究では,半側空間無視の病態と自己意識性の関連性が検証されるとともに,自己意識性について大脳側性化が示唆された.
Journal
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- Proceedings of Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
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Proceedings of Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu 2010 (0), 265-265, 2010
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205626346496
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- NII Article ID
- 130006986445
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
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