ドキソルビシンによる心臓特異的な副作用の軽減法構築に関する基礎的検討
説明
【目的】心臓は、他の臓器に比べ酸性リン脂質であるカルジオリピンの含量が多く、一部の塩基性薬物の移行性が高いことが知られている。また、塩基性抗癌剤であるドキソルビシン(DOX)は臓器特異的な副作用として心筋障害が報告されている。したがって、DOXを患者に投与する際、毒性が少なくかつ心筋への移行性の高い薬物を併用することにより、心筋障害を回避できる可能性がある。そこで今回、ラットの各臓器より抽出した脂質を有機溶媒に溶解し、DOXの脂質添加有機溶媒/緩衝液分配係数を測定することにより臓器移行性の特徴を評価し、さらに臓器移行性を低下させる可能性のある塩基性併用薬物のスクリーニング法を確立することを目的として検討した。<BR>【方法】Folchらの方法によりラットの心、肺、肝、腎ならびに脾より脂質を抽出し、Yataらの方法(Pharm. Res., 7: 1019-25, 1990)に準拠して、DOXの脂質添加クロロホルム/pH4.0リン酸緩衝液分配実験を行った。また、10μMのDOXに対して、各種塩基性薬物を1mM共存させ阻害実験を行った。<BR>【結果・考察】各臓器抽出脂質を含有したクロロホルムへのDOXの移行性は、肺が最も高く、次いで心、脾、腎、肝の順であった。また、心脂質含有クロロホルムへのDOXの移行は、プロプラノロール等の脂溶性の高いβ-ブロッカー、キニジン、キニーネ、イミプラミン、クロルプロマジン及びベラパミル等を共存させることにより有意に低下した。一方、ダウノルビシン、アミカシン、アジスロマイシン、ピンドロール、ならびに酸性薬物であるサリチル酸では阻害効果は弱いかあるいは全く認められなかった。これらの結果より、DOXの心脂質含有クロロホルムへの移行は比較的脂溶性の高い塩基性薬物により阻害されることが示唆された。現在、心組織片へのDOX取り込みに対するこれら塩基性薬物の阻害効果について比較検討中である。
収録刊行物
-
- 日本薬物動態学会年会講演要旨集
-
日本薬物動態学会年会講演要旨集 18 (0), 232-232, 2003
一般社団法人 日本薬物動態学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205626386048
-
- NII論文ID
- 130006986497
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可