男性不妊症モデルマウスのプロテオミクス

書誌事項

タイトル別名
  • Testis Proteomics in Mice Unable to Synthesize Ascorbic Acid

説明

【目的】男性不妊症の原因は特定されておらず、予防および治療法も確立されていないのが現状である。私たちはビタミンC合成に不可欠な酵素(L-glono-γ-lactoneoxidase)を遺伝子工学的に不活化させ作出されたビタミンCノックアウトマウス(以下、–VCマウス)を材料に用い、ビタミンC欠乏に起因する男性不妊症発症メカニズムの解明と、プロテオーム解析による男性不妊症発症原因タンパク質の検索を試みた。【材料と方法】–VCマウスと、飲み水にアスコルビン酸(330 mg/liter)を添加し飼育することでビタミンC欠乏症を回避させたマウス(以下、+VC マウス)を材料とした。マウスを麻酔下で灌流固定後、常法にしたがって免疫組織化学および電子顕微鏡試料を作成した。生化学的解析のためには、マウスを麻酔下で精巣を摘出し、可溶化した後に二次元電気泳動に供し、–VCマウスと+VC マウス精巣の二次元マップを作成し、タンパク質レベルでのサブトラクションを行なった。【結果と考察】20日齢 –VCマウス精巣では、染色液に濃染する変性生殖細胞が高頻度に認められた。TUNEL法および透過型電子顕微鏡を用いた解析によって、これら変性生殖細胞がアポトーシスに陥った精母細胞であることを確認した。20日齢 –VC および +VC マウス精巣の二次元マップによるサブトラクションより、20日齢 –VC マウス精巣では heat shock protein (HSP) 70 の発現が特異的に抑制されることを確認した。20日齢 +VC マウス精巣におけるHSP 70 の発現を免疫組織化学法によって解析した結果、精母細胞特異的に発現することを確認した。さらに免疫電子顕微鏡所見から、HSP 70 は精母細胞核に特異的に局在し、精母細胞の減数分裂における染色体の動態と HSP 70 の局在が極めてよく一致することを確認した。以上の結果より、20日齢 –VC マウス精巣で特異的に発現が抑制されるHSP 70 は、減数分裂に伴った染色体の折り畳みや輸送、相同染色体の会合に関与することが示唆された。したがって、ビタミンC欠乏は精巣内のHSP 70 の発現を抑制し、正常な減数分裂が行なえなくなった精母細胞がアポトーシスによって排除され、この結果成熟精子数の減少、または消失をきたし、男性不妊症が発症するのではないかと考えられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205633312000
  • NII論文ID
    130006995329
  • DOI
    10.14889/jhupo.2005.0.133.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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