北海道礼文島に生息するゴマフアザラシ ( Phoca largha)

  • 渋谷 未央
    東京農業大学生物産業学研究科 NPO北の海の動物センター
  • 小林 万里
    東京農業大学生物産業学研究科 NPO北の海の動物センター
  • 下道 弥生
    東京農業大学生物産業学研究科 NPO北の海の動物センター
  • 大石 康雄
    船泊漁業協同組合

説明

 北海道の礼文島に生息するゴマフアザラシの個体数調査を 2008~ 2009年に行った結果,礼文島内の各上陸場で個体数の季節変動に差異があることが明らかになり,季節ごとの生息条件が異なる可能性が推察された.また,近年の個体数急増に伴い 2010年の春から毎年,礼文島北部で有害駆除が実施されるようになったが,各上陸場の個体数の季節変動には大きな変動が確認されなかったことから,本種に季節ごとの生息条件が存在することが示された.生息条件には,アザラシ側の生物学的要因に加え,環境要因も関係していると推測される.そこで本研究では,本種の季節ごとの行動パターンを把握し,生息状況を左右する主要因を季節ごとに推測することを目的とした.<br> 解析には,2009年 3月と 2012年 8月に礼文島の十兵衛沢で衛星発信器(Wildlife Computers, MK10-AF)を装着した 2個体のデータと,2011年 8月から 2年間行った個体数調査で撮影した上陸個体の写真データ(現時点で約 8,000枚)を使用した.発信器データでは個体の行動圏や上陸場からの距離,利用水深,上陸場滞在時間,上陸場の利用頻度等を算出し,個体識別では季節ごとの上陸場間の移動やその範囲を把握した.それらが夏・秋と冬でどのような違いがあるのか解析した.位置データの行動圏を固定カーネル法で季節別に算出した結果,夏・秋は礼文島北部周辺を広範囲に利用していたが,冬が近付くにつれトド島を中心に行動圏が収束していく傾向が確認された.また,ArgosとGPSの季節別データ数は夏・秋に多く,それに比べ冬は極端に少なかったことから,冬は夏・秋に比べて上陸場での滞在時間や上陸頻度が少なくなっていることが考えられた.個体識別の結果からも,夏・秋にトド島以外の上陸場で発見された個体が冬にトド島で確認され,発信器データの結果と一致した.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205633594368
  • NII論文ID
    130004654724
  • DOI
    10.14907/primate.29.0.203.2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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