キタブタオザル(Macaca leonina)の系統地理

説明

【目的】キタブタオザル (Macaca leonina;以下キタブタオ)は,マレー半島基部を南限として,インド東アッサム地方からインドシナ半島全域,中国雲南省南西部まで広く分布する.このような広域分布にもかかわらず,キタブタオの形態的差異は生息地域間で乏しいとされている.しかし,こうした形態的特徴と比較するための地域個体群の遺伝的関係に関する情報はない.本研究では,キタブタオの種内の系統関係を明らかにするため,分布域広範な採材を行い, mtDNAの分子系統関係を推定した.また,Zieglerら(2007)のデータセットを加えて, silenus種群の分子系統の再構築を試みたので,あわせて報告する.<br>【材料と方法】キタブタオ(n=71)ミナミブタオザル(n=19;以下ミナミブタオ)シシオザル(n=2)アカゲザル(n=1)カニクイザル(n=,1)を分析対象とした.キタブタオ種内の系統関,係を調べるため,,mtDNAの Cyt b遺伝,子から D-loop前半までの約 1.8kbの塩基配列を解読した. Silenus種群の分析には Cyt b遺伝子 567bpを用いた.<br>【結果および考察】分子系統樹において,ボルネオのミナミブタオが最初に分岐した.次に,マレー半島(タイ南部)とスマトラのミナミブタオのクラスターとキタブタオのクラスターが分離した.タイ東部およびメコン川西岸由来のキタブタオはマレー半島/スマトラのミナミブタオのクラスターに含まれた.シシオザルはキタブタオのクラスターに含まれた. Silenus種群の分子系統樹は,Zieglerら(2007)の結果と概ね一致したが,彼らはタイ東部~メコン川西岸のキタブタオを分析していない.このことはミナミブタオのマレー/スマトラ集団の系統的位置づけを考える上で重要な鍵となると思われる.ブタオザルグループの地理的放散に関する2つのシナリオを紹介したい.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205633635200
  • NII論文ID
    130004654746
  • DOI
    10.14907/primate.29.0.95.1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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