Development of the laryngeal sac in chimpanzees
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- NISHIMURA Takeshi
- 京都大・理
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- MIKAMI Akichika
- 京都大・霊長研
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- SUZUKI Juri
- 京都大・霊長研
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- KATO Akino
- 京都大・霊長研
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- KUMAZAKI Kiyonori
- 京都大・霊長研
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- MAEDA Norihiko
- 京都大・霊長研
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- TANAKA Masayuki
- 京都大・霊長研
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- TOMONAGA Masaki
- 京都大・霊長研
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- MATSUZAWA Tetsuro
- 京都大・霊長研
Bibliographic Information
- Other Title
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- チンパンジーにおける喉頭嚢の成長
Description
喉頭嚢は、声帯付近に開口部を持つ嚢状の器官で、霊長類の多くの種にみられる。大型類人猿の喉頭嚢は、他の霊長類のものと比べてひじょうに大きく、両側の喉頭室から頚部前面を経て、胸部や腋下にまで広がる。しかし、ヒトでは病的なものを除いては喉頭嚢がみられない。喉頭嚢の進化は、大きな音声の生成やロコモーションの進化との関連性が示唆されている。本研究では、チンパンジーにおける喉頭嚢の成長過程を明らかにし、その変化とそれらの機能発達との関連性を考察する。本研究では、京都大学霊長類研究所で2000・2003年に出生した4個体のチンパンジー乳幼児を対象とした。磁気共鳴画像法を用いて、それぞれ定期的に矢状断面画像を撮像し、喉頭嚢の成長を観察した。両側の喉頭室から伸びた嚢は、4∼6ケ月齢までに舌骨と甲状軟骨の間の正中付近に達する。6ケ月齢までには舌骨内側に広がる。9ケ月齢には両側の嚢は正中で癒合していた。以降、一つとなった喉頭嚢は、頚部前面を尾側に向かって伸張し、24∼30ケ月齢までには頚部前面全体に広がり胸骨上縁に接する。30ケ月齢以降には、さらに胸骨前面の胸部に広がる。本研究では腋下の観察は技術的に観察でなきなかった。チンパンジーでは、6∼9ケ月の間に両側の嚢が正中で癒合すると考えられる。この時期に、チンパンジーでは共鳴音声の生成頻度が低下することが知られている。つまり、喉頭嚢と音声生成能力の成長は必ずしも一致しないことから、大きな喉頭嚢の音声生成に関連する適応進化という示唆は支持されない。むしろ、呼吸器官や声帯の成長発達の後に、喉頭嚢がその機能を担うようになると考えられる。喉頭嚢の成長には、ブラキエーション等のロコモーションの発達との関連性がみられる。大型の体でのブラキエーションには、急激な呼気流の緩衝を必要とする。よって、大きな喉頭嚢はその機能適応として進化したと示唆される。
Journal
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- Primate Research Supplement
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Primate Research Supplement 20 (0), 35-35, 2004
Primate Society of Japan
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205633735936
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- NII Article ID
- 130006995877
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed