ニホンザルのアカンボウの伴食行動に生息環境が与える影響:下北半島と屋久島の比較

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タイトル別名
  • Effects of habitat differences on co-feeding behavior of infant Japanese macaques during weaning: Comparison between Shimokita Peninsula and Yakushima Island populations

抄録

<p>アカンボウ期は、群れ他個体との関係が形成される重要な時期であり、特に離乳期は、採食を通じた関係が生じる。ニホンザルのアカンボウは、冬には採食を行う必要が生じるが、食物条件は地域によって異なる。本研究は、生息環境の異なる2地域間を比較し、食物の物理的性質を含む生息環境がアカンボウの伴食行動に与える影響を検討することを目的とした。2008-2009年に落葉樹林帯に属す下北半島、2010-2011年に常緑樹林帯に属す屋久島において、冬季に母子4組を対象に採食行動と近接個体の行動を記録した。各食物を4つの物理的性質(食物の大きさ、操作の有無、高さ、かたさ)により評価し、アカンボウに好まれる寄与度に応じ重みづけし、食物の物理的性質を総合的に評価するスコアを作成した。両地域共に、母親が入手や処理の難しい(スコアが高い)食物を利用した際は、アカンボウは母親から5mを超えて離れる傾向にあった。また、母親から分離後、アカンボウは、母親より入手や処理の容易な食物を利用する他のアカンボウと伴食することが多かった。屋久島と比較し下北では、母親が入手や処理の困難な食物を利用した際に、アカンボウの近接率が高かった。また、下北のアカンボウは、他のアカンボウとの伴食時間が短かった。これらの結果から、両地域共に、アカンボウは身体能力が未熟なため、母親の食物が入手や処理が難しい場合は母親から離れやすく、また、母親と分離時には、食物選好性が類似する他のアカンボウと伴食し、群れとはぐれる危険を回避していたと考えられる。屋久島と比較し、下北では、気温が低く、食物条件が厳しいため、採食時にアカンボウは母親の保護を受けやすい距離に留まりやすく、また、そのため下北では他のアカンボウとの伴食が少なかったと考えられる。以上のことから、食物の物理的性質は、気温や食物条件などの他の生息環境の違いと相まって、アカンボウの伴食行動に影響を与えていた。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205633770752
  • NII論文ID
    130005418760
  • DOI
    10.14907/primate.32.0_33_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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