オランウータンとチンパンジーの足部における筋形態について

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タイトル別名
  • Muscle dimensions of the foot in the orangutan and the chimpanzee

抄録

【目的】オランウータン(オラン)とチンパンジー(チンプ)の足部におけるロコモーションと関連した筋形態をより定量的に議論するために、筋の形態計測値(筋重量、生理学的断面積PCSA)を測定し、比較を行った。【材料と方法】オラン2個体とチンプ4個体の足部から筋を分離し筋重量を計測した。筋は10%ホルマリン液で固定後、筋束長を計測した。PCSAは計算(筋重量÷[筋密度(Mendez & Keys, 1960)x筋束長])によって求めた。両者の比較は、足部の総和に対する各筋の比率について行うと同時に、解剖学的特徴から分類した機能群ついても行った。【結果と考察】オランでは骨幹筋群における、チンプでは母趾球筋群の筋重量比、PCSA比がより大きな値を示した。樹上性のオランは、枝を正確に把握するために足部も手部と同様に、第二趾から第五趾が長く湾曲し、hook-like gripが可能である。足部の骨幹筋群が内在性の中足趾節関節の屈筋として最も重要な役割を果たしていることから、オランの骨幹筋群における樹上性ロコモーションへの適応が示唆される。一方、第一趾が退化傾向にあるオランと比較し、チンプの第一趾は長く、停止する外在性の筋群も発達している。チンプで認められた発達した内在性の母趾球筋群もまたhallux-assisted gripの機能的な優位性を与えているものと考えられる。オランにおける第二趾から第五趾の長さには大きな違いがないことから、各趾に関係する筋の発達も同様にほぼ等しいものと予測された。しかし、個々の筋の比較は、第二趾に停止する背側・足底骨幹筋、短趾屈筋・伸筋の各成分がオランにおいてチンプよりも大きな筋重量比、PCSA比を示した。足部の運動力学的な情報が少ないため、オランの足部における内側に偏った筋の発達が両者のロコモーションの差異を反映しているかはさらに検討が必要である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205633979264
  • NII論文ID
    130005471428
  • DOI
    10.14907/primate.28.0_76
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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