堅果類の結実の年次的な変動がニホンザルによる液果類の種子散布特性におよぼす影響

書誌事項

タイトル別名
  • Effects of yearly variation in nut fruiting on characteristics of seed dispersal of fleshy-fruit by Japanese macaques

説明

研究の背景・目的:秋から初冬にかけて地上に大量に落とされる堅果類は脂肪分に富み、冷温帯地域のニホンザルにとって重要な食物資源である。いっぽう液果類は供給量の絶対量の少なさゆえにサルの依存度が相対的に低く、補助的な食物となっている。果実類の生産量は年次的に変化し、その程度は堅果類で著しい。堅果類の供給が少ない年には、サルは液果類を多く採食することで栄養要求を満たそうとするが、このようなサルの採食行動の変化が、液果種子の散布特性、具体的には種子の出現率・個数・破壊率などに影響している可能性がある。本研究では、長期データを利用してこの点を検証する。<br> 方法:調査は宮城県金華山島で実施した。1999年から2008年にかけて各季節のサルの糞を採集し、糞中の種子の取り出しと種同定・個数のカウント・破壊率の評価をおこなった。糞から出現した36種のうち出現頻度の高かった主要12種について、各年の1) 糞からの種子の出現率、2) 糞一個あたりの種子の数、3) 種子の破壊率を調べた。いっぽう調査地内に設置した種子トラップを用いて各年の主要堅果類4樹種の単位面積当たりの結実量を評価した。<br> 結果:堅果類4種の結実が少ない年には、サルの糞からの種子の出現率が高まり、糞一個あたりの種子数が増加し、逆に種子の破壊率が低下した。異なる季節のデータが得られたガマズミとノイバラの二種に関しては、堅果類の結実が少ない年には秋に多くの種子が出現するのに対して結実が多い年は冬まで種子が出現しないこともわかった。<br> 考察:堅果類の結実の年次変動が液果類の種子散布特性に影響していること、いくつかの樹種では果実の利用開始時期も堅果類の結実状態から影響を受けることがわかった。液果種子の散布特性の評価において生息環境のモニタリングが不可欠であること、またシードレインの推定に当たっては、種子が散布される時期の動物の行動特性の理解が不可欠であることが示唆される。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205634039936
  • NII論文ID
    130005471473
  • DOI
    10.14907/primate.28.0_27
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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