ニホンザルの毛づくろい前の音声の地域変異について
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- 菅谷 和沙
- 神戸学院大・院・人間文化学
書誌事項
- タイトル別名
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- Local variation of a sound before grooming of a Japanese monkey
説明
(目的)ヒトをはじめとする社会的な動物には状況や個体関係に依存した意思表示が多く見られる。中でも、2個体間の意思伝達に関わる行動はヒトの言語起源を探る上で重要である(Itani,1963)。動物に見られるさまざまなコミュニケーションのうち、霊長類では音声と毛づくろいを結び付けて論じられることがある。そのため、音声と毛づくろいに着目し、毛づくろい交渉に見られる音声を取り上げる。本調査ではニホンザルが他の個体に接近し毛づくろいを始める際に発する音声を対象とし、ヒトや動物に共通する音声が何を内包するかを探るために、屋久島での調査を行った。<br> (方法)鹿児島県屋久島西部息に生息するニホンザル(E群)のオトナメスを対象とする。調査期間は2004年5月21日―6月17日のうち、約193時間である。アドリブ観察を行った。屋久島での直接観察と幸島(Mori,1975)をはじめとする他の調査地との比較を行う。<br> (結果)屋久島では発声せずに接近および毛づくろいをし、幸島ではしない傾向がある。屋久島では発声後に毛づくろいが生じやすく、幸島では毛づくろいが生じにくい。屋久島では発声すると毛づくろいが生じにくくなるが、他個体からの接近を待っていた個体による毛づくろいが増加した。<br> (考察)以上のことから屋久島は個体間の緊張が低いため、緊張緩和のための発声は少ないということが分かった。また、幸島は個体間の緊張が高いため、発声が多い。さらに、屋久島では「毛づくろいしてくれ、あるいは毛づくろいしようよ」、幸島では「毛づくろいするよ」という意味をもつことが示唆された。また、屋久島では発声後に待機個体が毛づくろいの生起を左右する可能性が示唆された。この差が生じた原因には、餌をめぐる個体間の緊張の高さや、群れ内の個体数が考えられるが、それを判断するためには他の調査地との比較を行う必要がある。
収録刊行物
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- 霊長類研究 Supplement
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霊長類研究 Supplement 21 (0), 9-9, 2005
日本霊長類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205634115072
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- NII論文ID
- 130006996330
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可