Maxillary sinus variation in hybrid macaques: implications for the genetic basis of craniofacial pneumatization
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- ITO Tsuyoshi
- 京都大・霊長類研究所
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- KAWAMOTO Yoshi
- 京都大・霊長類研究所
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- HAMADA Yuzuru
- 京都大・霊長類研究所
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- NISHIMURA Takeshi D.
- 京都大・霊長類研究所
Bibliographic Information
- Other Title
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- マカクの種間雑種における上顎洞変異:顔面頭蓋の空洞化に寄与する遺伝的基盤に関する示唆
Abstract
和歌山県では,外来生物法により特定外来生物に指定されたタイワンザルと在来ニホンザルとの交雑が問題になっている.生物多様性の減少や変化に対する懸念から,本外来種と交雑個体の捕獲事業が行われてきた.円滑な捕獲作業のために,交雑を識別する形態指標の発見が期待され,これまでには相対尾長が交雑の程度を反映することが明らかにされている.本研究は交雑度の新しい形態指標を探るべく,顔面頭蓋の形態と4つの遺伝マーカーから推測される交雑度との関係を調べた.結果,顔面頭蓋の形態は交雑の程度を反映し,例えば雑種第一代と推測される個体は両親種の中間形を示した.したがってこの特徴は,交雑個体の判定に応用できる可能性がある.<br>一方で,顔面内部で鼻腔の両側に形成される上顎洞という空洞構造物は,交雑の程度を反映しないことが明らかになった.つまり交雑個体の上顎洞は,両親種の中間形を示さず,交雑の程度に関わらずタイワンザル同様に大きかった.したがって種間交雑は,顔面頭蓋の形態を交雑度の程度に応じて変化させるが,上顎洞の縮小は伴わない.<br>上顎洞などの副鼻腔の形態は近縁種間であっても顕著な変異があり,何故このような種間多様性が生じたのかについて,活発な議論が続いている.一つには,副鼻腔の発達は日和見的で,その変異は顔面頭蓋の構造的制約によって受動的に生じるとする仮説がある.本研究の結果は,少なくともマカクにおいて,上顎洞に対する顔面頭蓋の構造的制約の影響は極めて弱いことを示唆する.また,上顎洞自体の変異を支配する遺伝的要因の存在が示唆される.霊長類における副鼻腔の種間多様性の一部は,副鼻腔自体を支配する遺伝子の進化によって形成されたと考えられる.
Journal
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- Primate Research Supplement
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Primate Research Supplement 30 (0), 56-56, 2014
Primate Society of Japan
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205634224768
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- NII Article ID
- 130005471918
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
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