野生ニシローランドゴリラにおけるオスの社会関係
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- 坪川 桂子
- 京都大・理学
書誌事項
- タイトル別名
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- Male-male social relationships in wild western lowland gorillas
説明
近年、低地熱帯雨林に生息するニシローランドゴリラ(WLG)の調査が進み、長年調査が行われてきた山地林に生息するマウンテンゴリラ(MG)とは異なる社会構造が明らかとなってきた。MGでは複雄複雌群の割合が約4割と高く、安定したオス・グループの存在もしられている。一方、WLGは95%以上が単雄複雌群であり、複雄複雌群やオス・グループは稀である。これらの違いには、オスの社会生態的特徴が影響していると考えられるが、野生WLGのオス間の社会関係に関する知見は限られていた。本研究は、WLGにおいて群れ内・群れ間のオスがどのような社会交渉をしめすのか明らかにすることを目的とした。ガボン共和国ムカラバ・ドゥドゥ国立公園において2011年から2014年にかけて、人付けされた単雄複雌群1群(GG)とヒトリオス1頭(MR)をそれぞれ約4ヶ月間追跡し、直接観察を行って社会交渉を記録した。その結果、GGやMRが他の群れやヒトリオスと視覚的に遭遇する事例を複数回観察した。遭遇の際、群れやヒトリオスのシルバーバック(成熟オス)どうしには、誇示行動などの敵対的交渉や接触を避ける行動がみられた。一方、群れのブラックバック(若いオス)は、他群やヒトリオスのシルバーバックに穏やかに接近し、遭遇相手とのあいだで敵対的な交渉を交わさなかった。また2013年には1頭のブラックバックが一時的にGGに移入する事例を観察した。このブラックバックは数か月に渡ってGGと遊動をともにし、GGの個体との伴食行動もみられた。特にGG内の複数頭のブラックバックと一緒に行動し、GGのシルバーバックも彼に対して寛容的な態度を示した。シルバーバックどうしの敵対的な関係、ブラックバックどうしの親和的な関係、シルバーバックがブラックバックに対して寛容的であることが、WLGにおけるオス間の社会関係の特徴であると考えられる。本発表では、こうした特徴と社会生態的特徴との関連を考察する。
収録刊行物
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- 霊長類研究 Supplement
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霊長類研究 Supplement 30 (0), 35-35, 2014
日本霊長類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205634260480
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- NII論文ID
- 130005471850
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可