ツキノワグマの冬眠行動に関連する要因分析

説明

クマ類の冬眠行動は初雪,餌資源などの生息環境によって多く影響を受けていることが報国されている.しかしながら,これら冬眠行動に関する要因を複合的に解析した研究はほとんどない.そこで本研究では,1999 年から2013 年にかけて明らかになったツキノワグマの冬眠入り日及び冬眠明け日を解析し,冬眠行動がどのような要因に大きく影響を受けているのかを明らかにすることを目的とした.<br> 本研究で対象としてのは、長野県軽井沢町において1999 年から2013 年までにテレメトリー調査されたツキノワグマ雄 26 頭,雌 34 頭の計 60 頭である.発信機の電波状態と踏査のデータから冬眠入り日・明け日をそれぞれ特定してた.冬眠行動と関連していると考えられる説明要因を大きく 4つに分け,性別・気温・天候・食物資源とした.性別は,雄・妊娠メス・非妊娠メスの 3タイプとした.気温・天候に関しては気象庁の過去のデータベースを用いて 11月・ 12月・ 3月・ 4月における平均気温と日商時間,初雪日を求めた.餌資源に関しては、ミズナラ・クリ・コナラの 3種について結実度合いを評価した.これら要因を説明変数として分析を行い,冬眠行動と関連する要因を調べた.<br> 14 年間の調査機関において冬眠の入り日を特定できたのは 138回,冬眠から出た日を特定できたのは 109回であった.これらデータを用いて解析を行った結果,雌において冬眠の入りと有意に相関が見られたのは,食物資源量および 11月の日照時間であったが,雄では有意な相関が認められる要因はなかった.一方,冬眠明けは雌雄ともに、どの要因とも有意な相関は認められなかった.また,冬眠明けの日に関しては,雄が妊娠メス,非妊娠メスよりも有意に早く冬眠から覚める結果となり、冬眠期間は雄が妊娠メスよりも約 22日間短いことが示され,雌雄によって冬眠行動が大きく異なることが明らかになった.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205634680704
  • NII論文ID
    130005471419
  • DOI
    10.14907/primate.29.0_104_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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