幸島の小群(マキ・グループ)の土地利用

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タイトル別名
  • Home range use by the small group living in Koshima

抄録

 幸島には主群の他に小さな分裂群がいる。この小群が個体識別された特定の採食樹を繰り返し利用する現象をこれまで扱ってきた。今回採食樹の位置をGISソフトを用いて地図上にプロットし、日々の遊動経路を地図上に落とし、秋の一ヶ月の遊動図4年間のデータを比較した。採食樹の地図上の位置が固定されているので、等高線地図に落とした手書きの遊動経路をGIS ソフトで復元することができた。個体識別された特定採食樹の繰り返し利用は、小群の遊動域が狭いことと密接な関係があることが分かった。つまり、同一面積の小区画を通過する遊動の軌跡の密度が、過去発表されている幸島主群や屋久島のデータと比べて非常に高かった。しかしながら、遊動がランダムに行われているだけで、同一採食樹へ出会う頻度が高くなるわけではない。年度によって集中利用される採食樹があった年とそうでない年がある。2004年には果実がほとんど実らず、主な食物がどこにでもあるヒメユズリハの葉だった。2005年はどこにでも実があるシロダモが主に利用された。集中利用する採食樹のあった1999年、2001年の実際の利用エリアは、集中利用採食樹のなかった2004年、2005年の利用エリアと比べて小さかった。つまり、集中利用の遊動はランダムに行われているわけではない。集中採食樹のある年には、集中採食樹のある区画を中心に複数の区画が滞在区画(順番待ち区画)として利用され、それらの区画の別の採食樹がバッファーとして利用されるようになった。小群の水飲み場は、島の東側と西側の海岸にそれぞれあるが、東西の水場をつなぐ、島の中の標高の低い部分が通り道、採食場として利用された。これは、道というより採食・通過ベルトと呼べるもので、二次林のエリアと一致していた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205634740608
  • NII論文ID
    130006997159
  • DOI
    10.14907/primate.27.0.64.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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