マハレのチンパンジーの果実採食の季節性と年変動―とくに<i>Saba comorensis</i>の重要性に着目して

DOI

抄録

タンザニア、マハレのチンパンジーの6年間の採食データから、どの果実が実際にどのくらい食べられているのか、月や年による違いはあるのかを報告する。6年間の利用を見ることで、単年度では把握できないような種の利用などもある程度定量的に見ることができる。その上で、果実食物の相対的重要性をより客観的な指標で提示し、その結果を過去のマハレの採食品目や重要性と比較することで、長期的な食物利用の変化を概観する。2008年から2013年の6年間にマハレ山塊チンパンジー研究プロジェクトが収集した採食データを用いた。ある1日にある果実アイテムが食べられたかどうかをワンゼロデータとして用いた。このデータセットから、果実アイテムごとに6年間での総合順位、各年の順位、月ごとの採食日数割合を算出した。6年間の1,346日で何らかの採食が観察された。月による観察日数は一定ではなく、最小は4月の平均11.3日、最大は10月の平均24.0日であった。この違いは、チンパンジーの離合集散パターンおよび研究者の多寡によると思われる。1日平均2.47種(±1.34SD)、最大で11種の果実採食が観察された。月平均では、11.5種(±4.57SD)、最大22種の果実が採食されていた。観察期間中に少なくとも66種の果実の採食が観察された(最少で1日のみ~最大683日)。全体でもっとも多くの日で食べられたのはSaba comorensisという木性つる植物の果実であり、各年でも常に採食日数は1位であった。年間順位で複数年5位以内に入った種が7種あり、それ以外に複数年10位以内に入った種が6種あった。こうした種は年を超えて、コンスタントかつ頻繁に食べられる重要な食物と言える。一方で、年によって重要度が大きく異なる種もあった。多くのチンパンジー調査地ではイチジク(Ficus spp.)が重要な食物であることが多いが、マハレではSabaの重要性が顕著である。こうした食物の違いは、チンパンジーのグルーピングなどにも大きな影響を与えているだろう。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205634822528
  • NII論文ID
    130005485683
  • DOI
    10.14907/primate.31.0_66_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ