ニホンザルにおける皮幹筋とその支配神経について
書誌事項
- タイトル別名
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- <i>M. subcutaneustrunci</i> and its innervation in Japanese Macaque (<i>Macaca fuscata</i>)
説明
皮幹筋は、哺乳動物で比較的発達している皮下筋で、体幹の皮下を広く覆っている筋である。オポッサムでは、下方は大腿内外側の皮下・尾根部まで付着し、背側正中で左右の筋束が交叉しながら腱膜として上腕骨大結節まで達し、ツチブタでは、背側から腹側にかけて広く体幹を覆い、上腕骨、背部、胸筋表面、および乳頭の上方約2cmの正中部から薄い腱膜を介し付着し、大腿前面から外側面まで達する。一方で、ムササビでは、肩甲骨尾側から第4腰椎棘突起までの背側正中線、及び第4~5腰椎棘突起間の腰背筋膜から筋板として付着し、広背顆筋の内側面に達する。更に、カイウサギでは、肩甲骨以下の腰背筋膜に付着し、上腕の内側から腋窩部に達して深胸筋尾側部の背側面に沿って頭外側方に転じた後、上腕二頭筋の筋膜に付着する。霊長類において、ヒヒでは、肩甲骨下部と仙骨部の間、そして大腿伸側の頭側半分から上腕骨大結節に付着し、ヒトでは、急速に退縮し筋性腋窩弓が変異の形で出現する程度である。皮幹筋は、このように、動物種によってその大きさが異なり様々な付着部を持つのに対し、その支配神経は、腕神経叢腹側の神経である尾側胸筋神経によってのみ支配される。しかしながら、肋間神経外側皮枝と交通し皮幹筋に分布する例がイヌやツチブタそして稀ではあるがヒトで報告されている。ヒトの大胸筋腹部線維と筋性腋窩弓は皮幹筋の遺残と報告されているが、肋間神経外側皮枝が入る例を考えると、とくにヒトに近縁な非ヒト霊長類における皮幹筋の神経支配と筋内分布の精密な調査が重要であると考えられる。本研究では、ニホンザルにおける皮幹筋とその付着部、それを支配する胸筋神経及び筋内分布、そして肋間神経外側皮枝の関与を詳細に調査し、先行研究との比較から、ヒトを含めた皮幹筋の形態学的意義を考察する。
収録刊行物
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- 霊長類研究 Supplement
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霊長類研究 Supplement 31 (0), 84-85, 2015
日本霊長類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205635052928
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- NII論文ID
- 130005485772
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可