モンゴル草原を長距離移動するモウコガゼルの移動特性の地域差

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抄録

 長距離移動を行うウシ科の中型草食獣モウコガゼルは,モンゴルの森林ステップから砂漠まで様々な植生地帯にまたがって分布する.分布域の北部ほど降水量が多く,気温が低いため,北部では夏には植物量が比較的多いが積雪期間が長く,環境条件の季節変化が大きい.これに対して,南部では年間を通して降水量が少なく積雪も少ないため,植物量は少なく,環境条件の季節変化は小さい.このような環境条件の違いにより,移動距離や季節行動圏での滞在期間など,モウコガゼルの移動に関する特性が地域により異なる可能性がある.そこで本研究ではモウコガゼルの移動特性の地域差を明らかにすることを目的とした.解析には 2002年から 2010年の間に衛星追跡されたモウコガゼルのうち,1年以上追跡できた 19個体を用いた.7または 8日間隔で得られた位置データから,各個体・各年の年間積算移動距離や1日の最大移動距離を算出した.また,各個体の夏(6月)と冬(12月)の位置を始点とし,始点からの距離の時間変化パターンから,各個体の年ごとの移動型を5つに類型化した.夏始点 29例,冬始点 24例のうち,夏始点 25例,冬始点 17例が季節的な移動を行うタイプである季節移動型,混合季節移動型,分散型に分類された.これらの季節的移動をすると分類された例について,季節移動距離,移動開始時期,移動期間,季節行動圏での滞在期間を算出し,始点の緯度,経度との関係を解析した.年間積算移動距離は最大 1302 km,最小 442 kmであり,緯度と正の相関が認められた(p<0.01).季節変化が大きい北部ほど,モウコガゼルにとって各季節における好適な環境間の距離が大きいためと考えられる.

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  • CRID
    1390001205635092992
  • NII論文ID
    130005471605
  • DOI
    10.14907/primate.29.0_201_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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