カメラトラップ法を用いたツキノワグマの個体識別 ~胸部斑紋の安定した撮影における直立補助用杭の有効性~

Description

野生動物の保全管理には正確な個体数把握が必要である.カメラトラップを用いた個体識別は,毛皮模様(体側面の斑紋)の撮影が容易なネコ科動物において実施されてきた.ネコ科以外では,シカ(体背面の白斑紋)の例がある(小金澤 2004).近年,ツキノワグマの胸部斑紋が個体識別に有効であると報告されている(Higashide 2012).しかし,胸部の撮影はクマを直立させるなど撮影方法に工夫が必要である.そこで,本研究では直立補助用杭を用いた撮影手法を開発したので報告する.調査は2011年 6~11月に栃木県北部高原山山系において実施した.直立を促すため地上高 1.5 ~2.0 mにベイトを吊るし,ベイトの下にクマが安定して直立できるように杭(直立補助用杭 : 40 mm × 40 mm ×90 mm)を建てた.カメラ(Moultorie社製 : GAME SPY D-55IR)は,斜面谷側に設置し,カメラの設定条件は,撮影間隔 15秒(最短),動画撮影時間 30秒(最長)に設定した.また,撮影間隔が 30分以内である場合,独立イベントと判断した(O’Brien et al. 2003).その結果,3187カメラ稼動日数(カメラ設置日数:158日 ×カメラ台数:23台)において撮影イベント数は 62イベント,最小確認個体数は 22頭,斑紋撮影成功率は69.4 %であった.また,直立補助用杭の有無および胸部斑紋撮影の質(質 : 斑紋全体撮影イベント数とそれ以外のイベント数)について χ 2検定をした結果有意な差が認められた(P<0.05).以上のことから,直立補助用杭の設置は,胸部斑紋の安定した撮影に有効であることが示唆された.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205635118208
  • NII Article ID
    130005471628
  • DOI
    10.14907/primate.29.0_211_2
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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