サル追払い時におけるニホンザルとモンキードッグの行動

書誌事項

タイトル別名
  • Patterns of behavior exhibited by Japanese macaques (<i>Macaca fuscata</i>), and a dog that aim to drive away them at when the dog ran after the macaques

説明

近年,ニホンザル(Macaca fuscata:以下,サルと称す)による出没被害を軽減するために,各地でモンキードッグ(サル追払い犬)の導入が進められている。しかし,モンキードッグ出動時におけるイヌとサルの行動学的知見が少なく,その効果の判定は難しい。そこで本研究では,GPSテレメトリーによりモンキードッグを移動追跡し,さらに,モンキードッグ出動時のサルの行動を観察して,被害防除の効果について考察することを目的とした。<br> 調査は,2008年12月~2009年3月の4ヶ月間,山梨県富士吉田市旭地区および南都留郡富士河口湖町船津地区で行った。集落や農地でサルの群れが確認されると,5秒ごとに測位するように設定したGPSロガー(i-gotU GT100, Mobile Action Technology, Taiwan)を装着したモンキードッグ「ラッキー(4歳・雑種(紀州)・オス)」を,サルが目視できる地点で放した。<br> その結果,調査期間中のモンキードッグの出動回数は13回で,GPSの測位率は100%と大変高かった。さらに,サル追払い時のモンキードッグ平均出動時間は65分,平均走行距離は5.3km,平均標高差は77m,平均最高速度は26.5km/hrであった。時期別にみると,1月中旬までは,モンキードッグの走行距離および標高差とも,時期を経るごとに増加する傾向が認められたが,その後は,顕著な傾向は認められなかった。<br> また,モンキードッグ出動時に多くのサルは,イヌを確認するとすぐに走って林内に逃げ,立木に登り,イヌが確認できなくなると,林内を歩いて移動した。一方,モンキードッグを放した際に,集落に取り残されたサルは,人家の屋根や電線を伝い,林内へ移動した。さらに,オトナメス4頭に装着した発信器(ATS-M2950, Advanced Telemetry System, U.S.A.)の受信音は,長くても出動後3時間で微弱になった。以上のことから,モンキードックにサルが慣れると,追払いにかかる時間および距離は長くなるものの,サルが集落に取り残されても,サルは林内へ移動するため,被害防除機能が発揮されているといえる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205635224960
  • NII論文ID
    130006997716
  • DOI
    10.14907/primate.25.0.30.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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