出光興産 (株) 愛知製油所における哺乳類の企業活動への影響

DOI

抄録

 都市に近接する臨海工業地帯の企業緑地はまとまった面積を持ち相互に近接しているため,生態系ネットワークを形成しやすく,都市の生物多様性の保全に貢献できると考えられている.しかし,企業緑地は本来,騒音や災害を軽減するための緩衝緑地として大きな役割を担っている.そのため企業活動への影響を考慮せずに安易に野生動物を誘引,個体数を増加させることは企業緑地の本来の役割に支障をきたしてしまう可能性が考えられる.特に 2013年 3月 18日,4月 22日に発生した東京電力福島第一原子力発電所のネズミによる停電事故のように重大な被害をきたす事故も起こりうる.そのため生物多様性に配慮した企業緑地の整備,管理を行う場合は,保全対象と防除が必要な野生動物を明確にわける必要がある.<br> 本研究では,愛知県知多半島臨海工業地帯の出光興産 (株 )愛知製油所においてカメラトラップ法による哺乳類生息調査,シャーマントラップによるネズミ類捕獲調査を実施し,野生生物の生息調査及びそれらの企業活動への影響を評価した.生息調査の結果,カメラトラップ法によってタヌキ,ニホンノウサギなどの中型哺乳類,捕獲調査からは,アカネズミ,ハツカネズミ,ニホンジネズミが確認された.特にハツカネズミは変電所施設内に侵入し,配線等をかじり施設に害を与えていることが報告されている.そこで変電所内で捕獲されたハツカネズミ 5頭について mtDNAの D-loop配列を解析した結果,同一の母系集団であることが確認された.このことから変電所内で繁殖を行っていることが示唆され,変電所施設へのハツカネズミの侵入を防ぐためには,侵入経路を遮断し,変電所施設及び周辺部の生息地適性を下げるような改変等を行う必要がある.<br> 今後も生息調査を実施し,野生生物の保全に配慮した企業緑地の整備法及び管理法を提言していくと共に獣害を及ぼすネズミ類の侵入経路を明らかにし,防除法を検討していく予定である.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205635380224
  • NII論文ID
    130005471539
  • DOI
    10.14907/primate.29.0_181_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ