クモザル腕渡り動作の起源-ホエザルは初期モデルとなるか?
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- 藤野 健
- 東京都老人研
書誌事項
- タイトル別名
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- The origin of brachiating activity of the spider monkey - Is the Howler monkey an initial model?
説明
<p>【はじめに】新世界ザルのクモザル,ウーリークモザル,ウーリーモンキーは尻尾を用いる特有の腕渡り動作を示す。これは旧世界ザルの腕渡りとは独立し平行進化的に獲得された類似のロコモーションであるが,その成因を探ることは旧世界霊長類に観察される腕渡りの発生要因の解明にも繋がるものと考えられる。従来これに関する考察は乏しかったが,今回,同じクモザル科に属し四足歩行性を基本とするとされるホエザルの運動を観察する機会を得,若干の考察を試みた。【材料と方法】米国ルイジアナ州ニューオリンズにあるオーデュボン動物園にて飼育展示されるホエザル成体2個体をHDにてビデオ撮影した。撮影は2016年11月に行われた。動画をコマ割りし特にぶら下がり動作に注目して運動性を解析した。【観察】ホエザルは水平の枝の上を大方四足歩行で移動するが,2個体の内の1頭は前枝のみを使用した極く短時間の1ストロークでのぶら下がり移動動作を示した。この時には体重支持とすべく長い尻尾での枝への巻き付けを伴う。尻尾のみでのぶら下がり動作は観察されなかった。金網ケージの垂直な壁面を立位で四肢を用いて移動する動作は2個体とも観察されたが独立的な二足歩行は観察されなかった。【考察】新世界ザルではクモザル科以外のものは四足歩行性を示しぶら下がり移動性は全く示さない。同じクモザル科に属するが四足歩行性を基本とするホエザルは,前枝のみでの短時間の体重支持移動並びに弱いながらも尻尾での体重支持を示す点でクモザルの腕渡りの初期状態を示すモデルとなると考えて良いが,腕渡り進化の中間的段階には達しておらず,2者即ちホエザル亜科とクモザル亜科の間の運動性の違いは大きいと考えた。即ち,ホエザルの状態から前枝並びに尻尾での体重支持に高度に熟達したものがクモザルであるとのシナリオは描けるが,いかにして体長軸周りの律動的な反復移動様式としての腕渡りを獲得したのか,その直接のヒントは与えない。</p>
収録刊行物
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- 霊長類研究 Supplement
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霊長類研究 Supplement 33 (0), 58-59, 2017
日本霊長類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205635989888
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- NII論文ID
- 130006998568
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可