ニホンザル(<i>Macaca fuscata</i>)の浅指屈筋の筋束構成と支配神経について
書誌事項
- タイトル別名
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- Muscular constitution and innervation of the flexor digitorum superficialis in Japanese macaques (<i>Macaca fuscata</i>)
説明
<p>我々は以前,新世界ザルのコモンマ-モセットの浅指屈筋の形態と支配神経を調査し,それが原猿類(Yamada, 1992)やヒト(Ohtani, 1979; 山田,1986)での報告とは異なることを明らかにした(江村ら,2015)。浅指屈筋の形態や支配神経は種によって異なる可能性があるが,旧世界ザルにおける浅指屈筋の形態や支配神経を詳細に調べた報告は乏しく,霊長類の系統発生における浅指屈筋の進化の全貌は明らかではない。我々は今回,ニホンザル(Macaca fuscata)1体1側(右)の浅指屈筋の起始・停止,筋束の構成,支配神経を観察した。本研究に用いた標本は他の研究機関で実験に使用され,ホルマリンで灌流固定された後に譲渡されたものである。観察の結果,浅指屈筋は複数の筋腹・筋束で構成されており,全体として浅部と深部の2層に分かれた。第3指に停止腱を送る筋腹と第4指に停止腱を送る筋腹が浅指屈筋の浅部を構成し,これらの筋腹は上腕骨の内側上顆から起始した。深部では内側上顆から起始する比較的小さな筋腹が長さ約5cmの中間腱に移行し,中間腱は遠位で橈側と尺側2つの筋腹に連続した。このうち橈側の筋腹が第2指に,尺側の筋腹が第5指に停止腱を送った。中間腱の浅層面(掌側面)からは第4指への筋腹に合流する筋束も起始した。それぞれの停止腱は中手指節関節付近で二又に分かれ,その間を深指屈筋の停止腱が通過したあと各指の中節骨の基部掌側に停止した。また,浅指屈筋の起始部と一部癒合しながら内側上顆から起始する筋束が深指屈筋に合流した。浅指屈筋の全ての筋腹は正中神経の支配を受けていた。中間腱の遠位にある2つの筋腹から第2指と第5指に向かう停止腱が出ることはヒトの浅指屈筋と類似していた。今後例数を増やして個体差を検討し,また支配神経の筋内分布など詳細な所見を加えて発表したい。本研究は姫路獨協大学動物実験委員会の承認を得て行われた(H28-05)。</p>
収録刊行物
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- 霊長類研究 Supplement
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霊長類研究 Supplement 33 (0), 57-58, 2017
日本霊長類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205635990784
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- NII論文ID
- 130006998570
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可