大型類人猿情報ネットワークの第一期総括と展望

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タイトル別名
  • Great Ape Information Network: Summary of the first period and Prospective View

抄録

ライフサイエンスの基盤整備として、文部科学省は2002年よりナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)を開始した。これは研究資源(モデル生物など)の収集、保存、配布システム構築を目的としていた。大型類人猿情報ネットワークは、このNBRPの一部門として開始された。2002-2003年度においてチンパンジーを研究基盤整備の対象とすることが可能か否か、可能な場合はどのようなシステムを構築するべきかが検討された。チンパンジーをはじめとする大型類人猿は、モデル生物とは異なる絶滅危惧種であり、飼育や実験には高度な動物福祉的配慮を必要とする一方で、研究対象として高い需要が存在していた。このような背景を検討し、従来の研究資源基盤とは異なる大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)を2004年に立ち上げた。GAINは国内飼育大型類人猿を対象に、その研究支援と飼育個体群保全を目標に、研究資料(非侵襲的に採材可能な資料)、施設・家系・個体情報を収集し、飼育施設と研究者の双方へライブラリとして提供するというネットワーク事業を整備してきた。各飼育施設に対しては、直接訪問による聴き取り調査(現在、44施設の調査を完了)を実施し、上記資料や情報の提供依頼をおこなってきた。収集した家系・個体情報は、社団法人日本動物園水族館協会が管理している血統登録の情報と合わせてWEB上で公開してきた。また、大型類人猿研究者に対しては、収集資料利用希望者の事前登録を進め(現在、65機関121人の登録者)、研究需要の把握をおこなった。両者の間でGAINがノードとなり、これまでに死体由来資料16個体173件、生体由来非侵襲資料8個体32件の配布をおこなった。今後の課題として、研究成果情報の収集と公開、家系と研究成果を追跡可能なデータベースの整備、飼育個体群の詳細な将来予測などがあげられる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205636183936
  • NII論文ID
    130006998854
  • DOI
    10.14907/primate.23.0.82.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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