2013年 3月に鳥取県鳥取市にある湖山池で目撃されたワモンアザラシ

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抄録

 2013年 3月に鳥取県鳥取市にある湖山池でワモンアザラシ( Pusa hispida)が目撃された.湖山池は周囲17.5km,面積6.8km2,平均水深 2.8mと浅く,日本で最も大きい池である.長さ 3.2kmの湖山川を通じて海と繋がっている汽水湖だが,1963年に湖山川河口近くに水門が設置され,湖山池周辺農地の塩害対策で海水の流入は制限されてきた.しかし,湖山池の富栄養化でヒシが大発生し,その腐敗臭が大問題となり,2012年 3月 12日に水門設置後初めて水門が全面開放され,高塩分化が図られている.<br> 2013年 3月 7日午後 2時 45分頃,地域住民が湖面に静置された漁具(産卵床)の上にいる海獣を見つけ,地元 TV局に連絡,翌日午前にその TV局が撮影に成功し,午後には全国放送された.当初,撮影された映像から,その海獣は,ゴマフアザラシかゼニガタアザラシの子供と推察されたが,その後撮影された写真,映像によってワモンアザラシで,成獣のメスの可能性が高くなった.ワモンアザラシは日本海から湖山川を通って湖山池に進入したと思われた.<br> 3月 7日から 26日までの 20日間で,目撃された日は 11日(以上)だったが,確実な目撃情報は最初に確認された漁具周辺のみで,その場所は,海に続く湖山川から最も遠い場所に位置する小さな入り江である.天候は晴れか曇で,波の無い穏やかな日に,入り江入口付近の漁具に上った.漁具は岸から約 30mの場所に固定されており,近くの桟橋で 20m弱まで近付くことができた.そのワモンアザラシは,最初は人間の声に反応して水中に潜っていたが,1週間程で,大声で話しても,カメラのフラッシュの光にも,警戒している様子だが,逃げなくなった.目撃された時間帯は,初めて目撃された 3月 7日のみ午後であったが,それ以降は,夜明け後から午前 11時頃の間で,短い時は十数分,長い時は 3時間以上漁具の上に滞在し,1日に複数回,漁具に上ることもあった.

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  • CRID
    1390001205636266368
  • NII論文ID
    130005471779
  • DOI
    10.14907/primate.29.0_263_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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