肝疾患の検査診断における疾患プロテオミクス

  • 野村 文夫
    千葉大学大学院医学研究院分子病態解析学
  • 朝長 毅
    千葉大学大学院医学研究院分子病態解析学
  • 曽川 一幸
    千葉大学大学院医学研究院分子病態解析学
  • 呉 迪
    千葉大学大学院医学研究院分子病態解析学
  • 根津 雅彦
    千葉大学大学院医学研究院分子病態解析学
  • 須永 雅彦
    千葉大学大学院医学研究院分子病態解析学

書誌事項

タイトル別名
  • Diagnostic roles of proteomics in patients with liver diseases.

説明

肝疾患の検査診断においては、簡便な血液検査を先ず実施し、超音波検査など外来診療として施行可能な画像検査へと進み、さらに必要に応じて入院の上、侵襲性のある肝生検・腫瘍生検を考慮する流れが一般的である。しかし、近年のプロテオーム解析技術の進歩により血清タンパク質解析から得られる情報量が飛躍的に増加している。<BR> 習慣飲酒は肝炎ウイルスと並ぶ慢性肝障害の主たる要因であるが、肝炎ウイルスマーカーに相当する特異的疾患マーカーが存在しない。また、ウイルス性肝硬変に併発する肝細胞癌の早期診断において、各種腫瘍マーカーは画像診断に遠く及ばないのが現状である。そこで、二つの異なる血清プロテオーム解析技術、すなわち、プロテインチップシステム/SELDI-TOF MS(サイファージェン・バイオシステム)および一次元目の等電点電気泳動にアガロースゲルを用いる蛍光標識二次元ディファレンシャル電気泳動2D-DIGE (アマシャムバイオサイエンス)を併用して各種肝疾患の新しい疾患マーカーの探索を試みた。<BR> 断酒治療目的に入院したアルコール依存症 (DSMIV)16名の入院時、断酒1週間後、3ヶ月後に経時的に採取した血清検体を用いた。2種類のイオン交換チップを用いたSELDI-TOF MSによる検討では断酒後に著明に変化する3つのピーク(5.9 kD, 7.8 kD, 28 kD)が検出された。これらのピークを精製・同定した結果、28 kDはアポA1, 5.9 kDはフィブリノーゲンαE鎖のフラグメント、7.8 kDはアポA2のフラグメントであった。とくに5.9 kDの変化は習慣飲酒のマーカーとして知られるγ-GTPのノンリスポンダーにおいても確認されたので、人間ドックなど健診の場への応用も期待される。一方、前処理としてのアルブミン除去後の血清を用いた2D-DIGEによる検討の結果、断酒前後に有意に変動するスポットが計8つ認められ、うち6つは断酒後発現量が低下し、2つは逆に増加した。以上のピークあるいはスポットはアルコール性臓器障害の新しい疾患マーカー候補であると同時に病態解析の一助にもなると思われる。同様の手法を用いて、肝細胞癌患者血清のプロテオーム解析を進めている。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205636267264
  • NII論文ID
    130006998926
  • DOI
    10.14889/jhupo.2005.0.39.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ