シエラレオネ、タクガマ・サンクチュアリにおけるチンパンジー逃走事件に関する報告
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- 樺沢 麻美
- 京都大大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科
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- ギャリガ ローザ
- タクガマ・チンパンジー・サンクチュアリ
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- アマラセカラン バラ
- タクガマ・チンパンジー・サンクチュアリ
書誌事項
- タイトル別名
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- Report on a chimpanzee escape incident at the Tacugama Chimpanzee Sanctuary, Sierra Leone
説明
西アフリカのシエラレオネにあるタクガマ・チンパンジー・サンクチュアリは1995年に違法ペット取引において没収された孤児を保護するために設立され、現在では90個体のチンパンジーが飼育されている。2006年4月、同施設で31個体のチンパンジーが脱走し、シエラレオネ人2人を殺傷してしまうという事件があった。発表者はサンクチュアリの活動に2001年から4年間従事し、2006年の事件発生直後と半年後に現地を訪れて、事件後の経過を調査した。<br> サンクチュアリは森林保護地区の中にあるが、保護地区近辺には首都フリータウンおよび多数の村落が存在する。にもかかわらず、脱走直後に2人の死傷者を出した以後は周辺住民に対する被害は報告されていない。事件から約2週間で21個体、半年後には計27個体が帰還した。うち21個体は自発的にサンクチュアリに帰還した。最後に回収した個体を含め、帰還した全個体に健康上の問題は見られなかった。帰還率に雌雄間で差が見られ、メスは全個体帰還したが、未帰還のオス4個体は現在でも保護地区内で生存している可能性がある。さまざまな傍証から、脱走したチンパンジーは保護地区内をグループで行動していたと思われる。リハビリテーションに時間がかかるといわれているチンパンジーだが、幼少の時から飼育下にいる個体でも、野生での行動パターンを取り戻せる可能性があることが示唆された。<br> 脱走したチンパンジーの捜索・回収には、政府関係者や周辺住民の理解と協力に大きく依存した。これらの人々と日常的に良好な関係を築いておくことが、サンクチュアリの危機管理上、重要であることが確認された。今回の事件の顛末を詳細に記載した本報告が示した反省点と示唆が、他のチンパンジー飼育施設の危機管理体制にとって良い参考となることを期待する。
収録刊行物
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- 霊長類研究 Supplement
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霊長類研究 Supplement 24 (0), 57-57, 2008
日本霊長類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205636278400
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- NII論文ID
- 130006998942
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可