胎児・成体マウスにおける放射線誘発適応応答は重粒子線にも当て嵌まるか? IV.胎児マウスを用いた実験結果のまとめ

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タイトル別名
  • Does Radioadaptive Response also Apply to the Case of Heavy-ion Irradiations in Fetal and Adult Mice? Part IV. A Summary on the Data Obtained in Fetal Mice.

抄録

放射線誘発適応応答(AR)とは、あらかじめ低線量の放射線を照射しておくと、その後の高線量での照射に対して、抵抗性を誘導するという現象である。適応応答の研究は、リスク推定に対し重要な科学的根拠を供給し、生物学的防御機構に重要な洞察を提供する。そして、実際に応用可能な新しい放射線療法をもたらす。一連の研究の中で、我々は、胎児と成体マウスにおいて、低LET放射線である X線と、高LET放射線である重粒子線の両方において、適応応答が誘導されるかどうかを調べてきた。その結果については、既に過去3回の放射線影響学会において報告している。今回我々は、胎児マウスについての仕事のまとめを行なう。妊娠11日目(E11)にX線で、0.05Gyあるいは0.3Gyの低線量を前照射すると、妊娠12日目に X線で高線量(3.5Gy)本照射を行なった場合に適応応答を誘導した(エンドポイントとして胎児死亡と奇形の抑制を用いた)。この適応応答のモデルを用い、1)低線量X線前照射による、高LET放射線である重粒子線での、高線量本照射に対する適応応答の誘導、2)高LET重粒子線での低線量前照射による高線量X線本照射に対する適応応答の誘導について調べた。重粒子線は、HIMACによって発生させたmono beamの炭素イオン線、ネオンイオン線、シリコンイオン線、鉄イオン線の4種類で、LET値はそれぞれ約15、30、55、200keV/マイクロメートルのものを使った。その結果、低線量のX線での前照射が、高線量の炭素イオン線、ネオンイオン線、シリコンイオン線の本照射に対して、適応応答を誘導することがわかった。一方、本照射を鉄イオン線で行なった場合には、適応応答は観察されなかた。また、高LET重粒子線を使って低線量前照射を行ない、高線量本照射をX線で行なった場合には、適応応答は認められなかった。これらのことは、一定の条件のもとで、低LET放射線であるX線での低線量前照射が、高LET放射線である重粒子線での高線量本照射に対して適応応答を誘導すること、そして、X線による適応応答の誘導が、本照射をするもののLET値と粒子の種類のうちのどちらか一方あるいは両方に依存していることが示された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205639213696
  • NII論文ID
    130006999109
  • DOI
    10.11513/jrrsabst.2011.0.227.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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