調節性分泌経路のペプチドミクス

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Peptidomics of the regulated secretory pathway

抄録

神経系・内分泌系細胞では、殆どの生理活性ペプチドは調節性分泌経路のシステムの中で前駆体蛋白質から切り出されて生成してくる。場合によっては特定のアミノ酸残基が活性発現に重要な修飾を受ける。このような一連の過程はプロセシングと呼ばれ、プロセシング酵素群の協調的な働きによって遂行される。前駆体蛋白質のプロセシング様式の解明は、未知の生理活性ペプチドの発見に重要な手がかりを与えるが、ゲノム情報のみに依存したプロセシングの推測には限界がある。一方、細胞が実際に産生するペプチドの一次構造を逐次解析するアプローチがこの問題に答えを与えることも期待される。これまでは、生理活性ペプチドを豊富に含む脳や内分泌器官が重点的に解析されてきた。しかし、プロセシングの結果生じてくるペプチドは、様々なプロテアーゼによって速やかに分解されていく。さらには、組織抽出の過程でプロテアーゼが活性化されて、細胞内の蛋白質が分解されてアーティファクトとなる。したがって、プロセシング酵素が作用した直後の分泌ペプチドを検出することは難しく、調節性分泌経路で生じているであろうプロセシングを追認することは事実上不可能だった。今回、分泌顆粒を有する培養細胞に短時間の脱分極刺激を与え、その培養上清中のペプチドの解析が、プロセシング研究に有効であることを報告する。一例として、甲状腺の内分泌細胞由来培養株を2分間刺激して、培地に放出されるペプチドを400同定したが、そのうち387ペプチドは、調節性分泌経路でプロセシングを受けることが文献的に知られている前駆体蛋白質由来であった。9種のペプチドホルモン・神経ペプチド前駆体蛋白質や、分泌顆粒のマーカー蛋白質である7種のグラニン類や、調節性分泌経路のプロセシング酵素(プロホルモン変換酵素1/3および2, アミド化酵素)が含まれていた。同定ペプチドの切断部位を調べると、373ペプチドは、これらのプロセシング酵素による切断を示唆するN端またはC端を有していた。詳細に検討すると、従来の生化学的研究で明らかにされているペプチドホルモン前駆体のプロセシング様式が反映されていることが判明した。従って、未知の生理活性ペプチドの探索に有益な知見を与えることが示された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205639719552
  • NII論文ID
    130006999562
  • DOI
    10.14889/jhupo.2009.0.83.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ