福島第一原子力発電所及びチェルノブイリ原子力発電所周辺の環境放射能レベル

DOI
  • 平良 文亨
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科放射線医療科学専攻国際保健医療福祉学研究分野 長崎県環境保健研究センター
  • 林田 直美
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科放射線医療科学専攻国際保健医療福祉学研究分野
  • 山下 俊一
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科放射線医療科学専攻放射線災害医療研究分野
  • 工藤 崇
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科放射線医療科学専攻アイソトープ診断治療学研究分野
  • 松田 尚樹
    長崎大学先導生命科学研究支援センター
  • 高橋 純平
    長崎大学国際連携研究戦略本部
  • グテビック アレキサンダー
    ジトミール州診断センター
  • 高村 昇
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科放射線医療科学専攻国際保健医療福祉学研究分野

書誌事項

タイトル別名
  • Environmental radioactivity levels of the Fukushima Dai-ichi nuclear power plant and the Chernobyl nuclear power plant

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抄録

【目的】本年3月11日、東日本大震災の複合災害により福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故(以下、「事故」という)が発生し、環境中に多量の人工放射性核種が拡散している。放射線防護の観点から、周辺の環境放射能レベルの把握と被ばくリスク評価は、極めて重要な科学的根拠となる。そこで、環境汚染の指標となる土壌に着目し、事故後に福島県内で採取した土壌の核種分析を実施し、25年前に原子力発電所事故を経験したチェルノブイリ周辺地域の環境放射能レベルと比較した。【方法】福島第一原子力発電所から30km辺縁に位置する地点において、事故直後及び事故後4ヶ月に土壌を採取し、事故直前にチェルノブイリ原子力発電所周辺地域で採取した土壌とともに、それぞれゲルマニウム半導体検出器にてγ線スペクトロメトリーを実施し、放射能濃度を測定後、人工放射性核種による実効線量を算出した。【結果】事故直後、福島県内では、131I等の短半減期核種を含む最大6種の人工放射性核種が検出され、137Csの濃度で比較すると、チェルノブイリ周辺地域に比べ非常に高いレベルの地点があった。また、実効線量を算出した結果、最大5.7μSv/hで比較的半減期が短い、131I及び、134Csが大きく寄与していた。さらに、事故後4ヶ月では、主な検出核種は放射性セシウム(、134Cs及び、137Cs)であった。【考察】種々のモニタリング結果から、事故後環境中に放出された多量の放射性核種は、広く周辺に拡散し地面等に沈着したことが推定されるが、福島県内の環境放射能レベル及び実効線量に大きく関与した人工放射性核種としては、事故直後は、131I及び134Cs、その後134Cs及び137Csに変化していることが示唆される。今後、人工放射性核種による環境・健康リスク評価を継続し、不必要な放射線被ばくの低減化を図るとともに、国民の安全・安心につながるきめ細かい情報提供が重要である。

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