日本の原子力発電施設等放射線業務従事者における死亡率解析(1991-2007)

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  • Analysis of mortality of nuclear industry workers in Japan, 1991-2007

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抄録

放影協では、低レベル電離放射線被ばくの人体影響について科学的知見を得ることを目的として、日本の原子力発電施設等における放射線業務従事者のコホート調査を行ってきた。手法は、従事者の住民票写しによる生死追跡と、人口動態調査死亡票転写分との照合による死因の確認および解析である。今回は、1999年3月末までに放射線従事者中央登録センターに登録され、2009年3月末までの前向き生死追跡を基に2007年12月末まで観察した男性(平均観察期間10.9年)約20.4万人(223万人年)を対象に死亡率(全死亡14,224名、全がん5,711名)を解析した。このコホートの被ばく累積線量は10mSv未満が多く(74.4%)、100mSv以上は3.0%、平均は13.3mSvである。日本人一般男性(20-85歳未満)死亡率に対する本コホートの標準化死亡比は、CLLを除く白血病では有意の増減は見られないが、白血病を除く全がん1.04(1.01-1.07)では有意に高く、これは肝がん1.13(1.06-1.21)、肺がん1.08(1.02-1.14)の寄与が大きい。がん死亡率(O/E比)と累積線量の傾向性検定では、白血病(CLLを除く)は有意でなく(p=0.841)、白血病を除く全がん(p=0.024)、食道がん(p=0.039)、肝がん(p=0.025)、肺がん(p=0.007)、非ホジキンリンパ腫(p=0.028)、多発性骨髄腫(p=0.032)が有意であった。白血病を除く全がんから、肝がんまたは肺がんを除外した場合には有意でなかった(p=0.097, 0.171)。さらに喫煙関連がん(p=0.009)は有意であったが、非喫煙関連がん(p=0.830)は有意でなかった。また、別途コホート内の約8万人に実施した生活習慣アンケート調査では、喫煙者の割合が高線量群に高率であったことからも、全がん死亡率と累積線量との関係には交絡因子の関与が強く疑われる。よって、低レベル電離放射線ががん死亡率に影響を及ぼしている明確な証拠は見られなかったと言える。本調査を今後も継続し、死亡数が十分に増加した時点で、喫煙習慣による直接的調整を伴う検定を行うことが国際的にも期待されている。

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