治療用重粒子線ブラッグピーク付近の核フラグメンテーション:水分解OH収量とPHITSによる線質評価

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  • Nuclear fragmentation near the Bragg peak of therapeutic heavy ion beam: evaluation of radiation quality from OH yields in water radiolysis and from PHITS

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がん治療用炭素線は生体内で数十cmの飛程を有する必要があり、核子あたり数百MeVのエネルギーで利用される。このような高エネルギー領域では、核破砕(フラグメンテーション)が起こり、炭素イオンが破砕してより軽いイオンや中性子などになる。本研究では、治療用炭素線のブラッグピーク付近において、水の放射線分解で生じるOHの収量を測定した。さらに核破砕による線質(イオンの内訳など)の変化についても計算機シミュレーションで考慮し、測定結果の再現を試みた。 水分解OHの収量測定には、これまで開発してきた高感度蛍光プローブを利用した(Baldacchino et al, Chem. Phys. Lett. 2009)。Coumarin-3-carboxylic acid (CCA) の希薄水溶液を照射試料とし、OHをCCAと反応させて蛍光体7OH-CCAに転換し、その生成量を測定した。照射は放射線医学総合研究所のHIMACで行い、400 MeV/uのエネルギーを用いた。照射の際には試料の上流にエネルギー吸収材を挿入し、ブラッグピークが試料溶液の内部または近くになるようにした。また、計算機シミュレーションは粒子輸送計算用コードPHITSを用いて実施し、照射ポートのジオメトリを考慮して計算を行い、粒子の種類・エネルギーなどを計算した。 収量測定の結果、上流側からブラッグピークに近づくにつれてOH収量は減少し、ブラッグピークの直ぐ下流で急激な増加を示した。PHITSシミュレーションでは、ブラッグピークを含む領域では一次粒子の寄与が大きく、ブラッグピークより下流の領域ではプロトンやヘリウムなど軽いイオンの寄与が大きかった。ブラッグピークより上流ではPHITS計算に基づいてOH収量を見積もることで測定結果が再現できたものの、ブラッグピークより下流の領域では差異が大きいことが分かった。

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