確率論を用いたDNA2本鎖切断生成に関する数理生物学的考察

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  • Mathematical modeling of the generation of radiation-induced DNA double strand breaks by stochastic approach

抄録

本研究ではDNAの二重鎖にランダムにできた1本鎖切断から2本鎖切断が生成される場合について、切断数と切断場所を表現する確率変数を設定することによって数理モデルを構築し、数学的に厳密に2本鎖切断数の全切断数に対する比の線量依存性の導出を試みた。<br>DNAの2本鎖切断生成の数理モデルとして、Chadwick and LeenhoutsによるLQモデルは最もよく実験データの解析に用いられている。このモデルでは、1つのイベント(粒子の通過)で2本鎖が切断される場合と、両鎖の1本鎖切断は独立に生成され、両者が時間的、空間的に近い場合に2本鎖切断に至る場合に分ける。後者の場合について、従来のLQモデルの導出手順では、E.L.Aspenの教科書Radiation Biophysics(1998)によると、両鎖の1本鎖切断生成数(q1及びq2)はポアソン分布に従うとして、比例係数などは除くと、q1, q2=[1-exp(-kD)]となる。ここで、kは単位線量あたりの切断確率、kDは平均切断数である。このとき、2本鎖切断数の全切断数qに対する比は、q/(q1+q2)=[1-exp(-kD)]2/([1-exp(-kD)]+ [1-exp(-kD)])~[1-exp(-kD)]=kD+(k2/2!)D2+・・・(式1)と求められる。<br>我々のモデルでは、各DNA鎖の長さをt、各鎖の切断場所の距離がd以内のとき2本鎖切断とみなすとし、このようなDNA2本鎖がN対あるとして、比q/(q1+q2)を求めた。1本鎖切断数は、1本鎖当たりの平均切断数がλのポアソン分布に従うものとした(λはLQモデルにおける平均切断数kDに相当する)。このとき比q/(q1+q2)はN→∞のとき、q/(q1+q2)~(d/t)[λexp(-2λ)+λ2exp(-λ)+λ3](式2)と表現され、式1とは異なる結果となった。しかし、式2においてもλが十分小さい場合は、式1と同様に線量に比例する項と線量の2乗に比例する項の和として表現できることがわかった。また、各DNA鎖の切断の可能性のあるbondの数をnとし、各bondが切断される確率をpとして1本鎖当たりの平均切断数がnpの2項分布に従うモデルも考察し、ポアソン分布の場合と比較した。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205641464320
  • NII論文ID
    130007000941
  • DOI
    10.11513/jrrsabst.2009.0.152.1
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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