発生段階での放射線適応応答に於けるマウス系統差に関する予備的研究

DOI
  • 王 冰
    放射線医学総合研究所・放射線防護研究センター
  • 田中 薫
    放射線医学総合研究所・放射線防護研究センター
  • Vares Guillaume
    放射線医学総合研究所・放射線防護研究センター
  • 尚 奕
    放射線医学総合研究所・放射線防護研究センター
  • 藤田 和子
    放射線医学総合研究所・放射線防護研究センター
  • 中島 徹夫
    放射線医学総合研究所・放射線防護研究センター
  • 根井 充
    放射線医学総合研究所・放射線防護研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Phenotype Verification of Radioadaptive Response in Fetal Mice of Several Different Strains: A Preliminary Study.

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抄録

放射線誘発適応応答(AR)は、放射線と生物の間の複雑な相互作用であり、多様な環境的・遺伝的要因によって修飾される。特に、遺伝的背景はARの誘導を左右する重要な因子であるが、異なる系統のマウスを組み合わせた実験系は人間の個人差を研究するのに良い動物モデルとなる。これまで、成体マウスを用いたin vivoでのARの研究において、明らかな系統特異性が観察されており、一方in utero(子宮内)での研究では、系統の違う胎仔マウスの間で前照射の効果に違いが出ることが示されている。ARが誘導される条件と誘導されない条件で遺伝子調節を比較することにより、異なる系統間でARの分子機構の類似点と相違点を明らかにすることが可能であり、将来的にオーダーメード医療へのAR応用の端緒を開くと期待される。本研究において手始めとして、いくつかの系統の胎仔マウスにおいて、胎仔死亡、肉眼的奇形、出生前発育遅延を指標として、in utero(子宮内)でのARの誘導について調べた。C57BLマウスでは、ARを誘導するために有効な前照射線量が2種類存在するが、C3HとBALB/cの純系胎仔マウスにその2種類の線量を前照射として用いた。さらに、C57BLの雌とC3Hの雄、C3Hの雌とC57BL雄、そしてその他の組み合わせの雑種胎仔マウスにもその2種類の線量を前照射として用いた。その結果、ICRや C57BLと異なり、C3HとBALB/cではARは見られなかった。興味深いことに、雑種胎仔マウスはそれらの前照射に対して多様な反応を示した。これらの結果は、胎仔マウスのAR誘導における複雑な系統依存性を示している。

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