プラチナナノ粒子によるDNA切断誘発の増感作用

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Enhancement of DNA damages by platinum nanoparticle

この論文をさがす

抄録

重金属はX線の吸収係数が大きいため、細胞に取り込ませたり、生体分子に結合させたりすることで、放射線作用を増感することができる。がん細胞に重金属を含む薬剤を取り込ませ、がんの放射線治療を効率良く行うアイディアが提唱されている。われわれは、 DNAに結合するプラチナ化合物 Chloroterpiridine platinum (PtTC)を用いて、重金属による放射線増感作用機構を解明する研究を続けている。これまでに、PtTCによる増感作用にはOHラジカルが関与していることがわかり、プラチナ原子より発生した2次電子により、周囲の水分子にラジカルが発生し、DNA損傷および細胞死を効率良く誘発していることが示唆された。<br>放射線治療に応用するうえで、細胞内での重金属薬剤の存在形態を知ることは重要である。PtTCは生細胞内においても細胞死を増感させる効果を持つが、細胞内では核に取り込まれず、細胞質に存在することがわかった。最近われわれのグループではさらに効率の良い増感剤の候補として、重金属ナノ粒子について検討を開始した。金属ナノ粒子は、触媒材料や磁性材料などのナノマテリアルとして注目されているが、粒子表面の保護材分子によってその特性を制御することができるので、細胞への取り込みに有利なように改変できる可能性がある。<br>γ線ラジオリシスにより作成したポリアクリル酸ナトリウム修飾プラチナナノ粒子を超純水中に分散させたものと、pBR322プラスミドDNA(東洋紡社製)水溶液を混合し、放射線医学総合研究所HIMACにおいて290MeV炭素線、および高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーBL-27AにおいてプラチナM-III吸収端付近の単色軟X線(2649eVおよび2639eV)を照射した。照射後、アガロースゲル電気泳動法により、DNA一本鎖切断、二重鎖切断の生成効率を調べたところ、PtTCと同程度の増感効果を示した。また、プラチナナノ粒子自身によりDNAに切断を誘発することはなく、生体分子に対する毒性は低いことが確認された。詳細は現在解析中である。

収録刊行物

キーワード

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ