日本の原子力発電施設等における放射線業務従事者のがん死亡率

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  • Cancer mortality in nuclear industry workers in Japan

抄録

低レベル電離放射線被ばくの人体影響について科学的知見を得ることを目的として、日本の原子力発電施設等における放射線業務従事者のコホート調査を行ってきた。手法は、従事者の住民票写しによる生死追跡と、人口動態調査死亡票磁気テープ転写分との照合による死因の確認および解析である。今回は、1999年3月末までに放射線従事者中央登録センターに登録され、2004年3月末までに前向きに追跡できた約20万人(男性: 137万人年)を対象にがん死亡率(全死亡7,670名、全がん3,093名)を解析した。このコホートの被ばく累積線量は10mSv未満が多く(75.4%)、100mSv以上は2.6%、平均は12.2mSvである。日本人一般男性(20-85歳未満)死亡率に対する本コホートの標準化死亡比は、全悪性腫瘍に有意の増減は見られないが、部位別では、肝がん1.13(1.04-1.23)、肺がん1.08(1.00-1.17)がより高かった。がん死亡率(O/E比)と累積線量の傾向性検定では、白血病(CLLを除く)は有意でなく(p=0.691)、白血病を除く全がん(p=0.047)、食道がん(p=0.002)、肝臓がん(p=0.040)、多発性骨髄腫(p=0.021)が有意であった。Bonferroni法により多重性検定を調整した後の傾向性p値は、食道がん0.032、肝がん0.48、多発性骨髄腫0.106であり、多重性を考慮しても有意なのは食道がんのみであった。さらに、別途nestedコホートに実施した生活習慣調査では、高線量群に喫煙者比率や中等度飲酒者比率がより高い傾向が有意なので、これら部位別がん死亡率を低レベル被ばく影響として評価するには、今後十分の死亡数を得た時点で、交絡因子を調整した解析の実施が待たれる。低レベル電離放射線ががん死亡率に影響を及ぼしている明確な証拠は見られなかったと言える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205641822720
  • NII論文ID
    130007001244
  • DOI
    10.11513/jrrsabst.2006.0.108.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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